子どもの頃からの夢か、リスク回避か
――2017年にポーランドに留学されました。
ロシア留学が一段落し、次にどこへ留学するか迷っていました。選択肢はフランス、アメリカ、ポーランドの3つ。最終的にポーランドに決めたのはショパン音楽大学のピオトル・パレチニ先生にピアノを習いたいと思ったことが大きいです。
パレチニ先生に教わるなら、何よりショパンです。最初のレッスンでは厳しいダメ出しもされたけれど、そこから地道に学び続けました。
一方で、3年後ショパンコンクールに出場するかどうかは、自分でもわからなかった。
子どもの頃からの憧れだったし、夢見た舞台に立ちたい気持ちはもちろんある。先生にも「ショパンコンクールを受けにきたの?」と聞かれました。ただ、出場はそれ自体がリスクだと思い悩んでもいました。
どんな世界も同じでしょうが、コンクールでは実力だけじゃなく、運も含めあらゆる要素が必要です。どんなに努力しても、いい結果を勝ち取れるかどうかはわからない。
――それでも、リスクを取って出場した理由は?
30歳という年齢制限があるので、コンクール開催時26歳(当初予定されていた2020年開催の場合。コロナ禍で1年延期のため実際は2021年に27歳で出場)の僕にとっては最後のチャンス。出なければ一生、後悔すると思った。子どもの頃からの夢が勝ちました。
ショパンコンクールを受けるかどうか決めかねていた時期も、その可能性はずっと意識していました。だからこそ、ポーランドでショパンを学んでいるという恵まれた環境の中で、コンクールに挑むことができた。
「ショパンのしゃべり方」といいますか、ショパンを弾くうえでの語法はやっぱり現地で学ぶのがいちばん。パレチニ先生のレッスンは1回1回が本当に貴重な時間でした。
ただ、留学中も当然、僕個人の演奏活動や日本でのオーケストラ活動は続いています。ショパン以外の曲にも同時に取り組んでいました。
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