ヤマハ、「本物」に近づけた電子ピアノの使命 高度な技術力を要する「音の響き」で差別化

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「音の響き」にこだわった新製品はどれだけ受け入れられるか(ヤマハ提供)

グランドピアノにどこまで近づけるのかーー。ヤマハは8月末から電子ピアノ「クラビノーバ」ブランドで最新の「CLP-700シリーズ」を順次発売(4機種17モデル)している。価格は15.5万~40万円と、10万円以下の電子ピアノが多く普及する中では中高価格帯に位置する。今回の新製品でヤマハが注力したのは「音の響き」だ。鍵盤のタッチ感だけでなく、鳴り響く音もグランドピアノと同じものを目指した。

巣ごもりで電子ピアノ需要が拡大

新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大した3月以降、電子ピアノは巣ごもり需要をとらえて売り上げを伸ばしている。電子ピアノメーカーの一角を占めるカシオ計算機は、4月の楽器事業の販売が前年同月比で国内が70%増、北米は110%増と大幅な伸びを記録した。

一方、サプライチェーンの混乱による供給不足から、ヤマハは2020年4~6月期の電子楽器事業は15%の減収になった。ただ、電子ピアノの実需自体は堅調で、小売店での品薄状態が続く。中田卓也社長は6月末のインタビューで「テレワークが普及し、通勤時間を音楽に充てたい人や音楽を聴くだけでなく、弾いて楽しみたい人が増えた」と話している。

ヤマハは売上高世界トップの総合楽器メーカーで、電子楽器市場では約5割のシェアをもつ。2020年4~6月期は対面販売が中心のアコースティックピアノや管楽器の売り上げが3~4割減少した中、電子ピアノを含めた電子楽器事業の落ち込みは相対的に小さく済んだ。

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