ショパンコンクールの優勝者が語るライブの魅力 ブルース・リウ氏「レコーディングは化学実験」

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趣味はカートレース、水泳、映画鑑賞、早指しチェス(撮影:梅谷秀司)

——リサイタルを聴いて、ブルースさんの音楽にはもしかしたらクラシック以外のバックグラウンドもあるのではないかと感じました。例えば、観客を煽るような演奏がジャズっぽく思えたり、没入感の面ではゲーム音楽のニュアンスを感じたり。何か影響を受けているものはありますか。

いろんな音楽を聴きますが、あまり意識したことがありません。僕は音楽だけじゃなく、いろんな趣味を持っているので、むしろそれらが影響してくる部分のほうがありそうです。

例えば自分が成長する中で触れてきた文化の影響もあるだろうし、美術、文学、歴史にもすごく興味がある。そういったもろもろの影響を、僕の音楽に感じていただいているのかもしれません。

クラシックのアーティストの中にも、ポップスを聴くのが好きだという人はたくさんいます。でも、僕の先生(ダン・タイ・ソン)は、あまりそれはしないほうがいいと言っている。耳がクラシックを聴く耳ではなくなるからって。僕もそうなのではないかと思っているところがあります。

ただ、キース・ジャレットやオスカー・ピーターソンのようなジャズのミュージシャンたちは好きでよく聴いています。ゲームミュージックにはあんまり興味がないけれど、しいて言えば「21世紀のリズム」のようなものがあって、鼓動があって、その影響を受けているという可能性はあるのかもしれません。

まったく別の分野に進んでいるかもしれない

「歴史が繰り返される」という言葉は多くのことに当てはまると思いますが、音楽の場合、最初はモーツァルトの曲のように非常にシンプルだったものがロマン派に続き、現代に向かってどんどん複雑化して、それが今またミニマリズムに戻りつつあるという印象を持っています。

結局、またシンプルな音楽に戻ってきているのが今。でも、今が絶対なのではなく変化はこれからも続きます。そんな流れの中で、固定観念があってはいけないですし、1つのものにこだわってはいけない。多面性、多様性が重要だと僕は思っています。

——商業的な成功についてはどのように考えますか。

あんまり考えたことがありません。こういうことを達成したいとか、このピアニストのようになりたいとか、あまり考えないんです。

10年後には、もしかしたらピアノとはまったく別の分野に進んでいるかもしれませんし。僕に限らず、人間は誰にも無限の可能性があるので、1つに決めないでいたほうが楽しいんじゃないでしょうか。

山本 舞衣 『週刊東洋経済』編集者

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やまもと まい / Mai Yamamoto

早稲田大学商学部卒、2008年東洋経済新報社に入社し、データ編集、書籍編集、書店営業・プロモーションを経て、2020年4月育休を終え『週刊東洋経済』編集部に。「経済学者が読み解く現代社会のリアル」や書評の編集などを担当。

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