専門医が指南、疲れた肝臓を蘇らせる「腸活術」 乳酸菌飲料より「納豆・キムチ」が体によい訳

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すると、それまで週に1〜2回あればいいほうだったお通じが、ほぼ毎日出るように。今までの人生でこんなに便通がよかったことはないと、感激されていました。食事療法をはじめて3カ月で体重は4.8㎏減、6カ月後もマイナス5㎏をキープ。そして、心配された肝機能を示す数値も劇的に改善したのです。

Sさんのように、腸の不具合が肝機能低下に影響するのは、便秘によってその分体重が増えるという単純な話ではなく、肝臓と腸が切っても切れない深い関係にあるからです。

腸は食べたものを消化・吸収し、最終的に便として排泄する消化器官です。小腸で栄養が吸収され、大腸で水分が吸収されるといわれますが、最近の研究で、大腸でも腸内細菌が関与して栄養が吸収されることがわかってきました。

便秘によって大腸内に便が長時間とどまると、腸内細菌が便から栄養を吸収するため、エネルギー摂取が増えて脂肪が増えます。肝臓脂肪も例外ではありません。もちろん、その間に水分も吸収され続けるので、便はさらに硬く出づらくなって、便秘が悪化するという悪循環も生じます。

また、冒頭で申し上げたように、腸内環境の悪化で悪玉菌の働きが強くなると、腸内に増えた毒素が、血液とともに静脈のひとつである門脈を介して肝臓にダイレクトに送られるため、脂肪肝から、より危険度の高い脂肪肝炎を引き起こす要因にもなります。

各臓器には動脈から血液が流れ込んでいますが、肝臓にはそれとは別に、胃や腸、すい臓、脾臓などの消化管からつながる門脈からも血液が流入します。しかも、その量は動脈からの約4倍にもなるため、門脈から入り込む血液が肝臓に与える影響はとても大きいのです。だから肝臓をよみがえらせたければ、腸の働きを健全にしないといけません。

「発酵食品」+「食物繊維」で腸内環境を整える

このように、肝臓の健康を取り戻すには、腸内環境の改善が欠かせません。そこで取り組みたいのが「腸活」です。腸内に棲む腸内細菌のバランスを良好な状態にすることが、腸活の大きな目的です。具体的には腸内の有用菌であるビフィズス菌や乳酸菌などの微生物である「プロバイオティクス」を、食品から積極的にとることです。それが腸内で乳酸や酢酸などの酸を作り、悪玉菌の作用を弱めることがわかっています。

ただし、砂糖や果糖ブドウ糖を含んだ乳酸菌飲料は避けてください。60㎖と容量が少ない乳酸菌飲料でも、スティックシュガー(1本3g)3本分の糖分が含まれています。血糖値上昇のリスクだけでなく、果糖を飲料でとることで肝臓に負担をかけます。ヨーグルトも無糖のプレーンに限ります。サプリメントも同様に、肝臓には負担です。

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