「沖縄通貨危機」に命をかけた政治家たち

沖縄返還の裏で行われていた極秘作戦

次々に浮かび上がる難題を怒濤のごとく片端から片付けて、何が何でも計画を実行しようとするエネルギーがすごい。沖縄のために、できることをするのだという気概である。

最後までああだこうだと抵抗する大蔵官僚を相手に、宮里は一歩も引かずに渡り合い、沖縄の住民が送ってきた厳しい戦後と苦労のありったけをぶつける。山中は竹下登官房長官を深夜に叩き起こして佐藤総理の裁断を求め、頑としてゆずらない水田蔵相と怒鳴り合いになる。一方、欺かれたことを知り、いきり立つ米国ランバート高等弁務官を前にして、屋良主席も動じない。

淡々と記される息をもつかせぬ事実

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本書(『沖縄返還と通貨パニック』)の著者、川平成雄氏は沖縄社会経済史を専門とする琉球大学の教授である。あくまでも学者・研究者として、事実を着々と、淡々と抑えた筆致で書き記している。にもかかわらず、その掘り起こされた事実はあまりにもドラマチックで、息をもつかせないほどである。次善の策として計画されたドル確認作業だが、返還に伴う通貨切り替えが引き起こした異常な物価高が沖縄を苦しめた事実は変わらない。

本書は、この「世紀のドル通貨確認作業」の顛末を描くにあたり、返還前のコザ反米騒動から語り始め、いまだのしかかる基地問題を描写して終わる。

あのとき、沖縄のために体を張る者がいたとして、なお、沖縄の背負う荷はあまりにも重い。

沖縄の島々は、人が住む島々ではなく、戦略のための島々でしかない。このような状況からいかにして脱するか。深くて長く続いている重い問いを考える際に、本書が一助ともなれば、幸いである。

 

あとがきに記された著者の言葉が、胸に残るのである。

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