生き物に異変!原発事故の「不都合な真実」

無視できない変化が起きている

当たり前だと思っていた、モンシロチョウが菜の花の周りを飛び交う春の光景(写真:Skylight / Imasia)

数日前、庭木の枝に小さな鳥の巣を見つけた。お椀型の巣は空っぽで、内側をシュロなどの繊維、外側はコケや地衣類で覆われ、クモの巣で枝に接着されている。

「メジロかな?」

かわらしい緑色の小鳥の姿を思い浮かべて笑顔になりかけたとき、不安に襲われた。コケや地衣類は放射能に汚染されやすいと聞くが、それを巣材に使った小鳥は、どうなってしまうのだろう?

ある写真家がみた原発事故

上の画像をクリックするとHONZのサイトへジャンプします

そんな疑問をもったとき、書店で見かけたのが本書『原発事故で、生きものたちに何がおこったか。』永幡 嘉之 (著・写真)である。子ども向けの写真絵本だが、解説もしっかりとしていて、読みごたえがある。著者は山形県在住の写真家で、原発事故で被害を受けた福島県の阿武隈山地にも昆虫調査で足を運んでいた。

本書のタイトルを見てまず想像したのは、「放射線を浴びた生物に奇形や生殖能力への影響が出たことがショッキングな写真でたくさん紹介されている」……というものだったが、違った。

テレビ局の記者から、「角のまがったカブトムシが見つかっています。これは放射線の影響ですよね」という質問を受けたことがありました。脱皮したばかりの昆虫は体がやわらかく、何かがふれただけで形がゆがんでしまいますから、ふつうにおこることなのですが、事故の直後は、何でも放射線の影響ではないかとうたがう空気がありました。

あおることなく、淡々と、冷静に、原発事故後に起きた自然環境の変化が写真とともに解説される。

本を開いて最初に目に飛び込んでくるのは、「春うららか」という言葉がぴったりな、里山の写真。新緑のさえずりが聞こえてきそうだ。だが、これが原発事故の被害を受けた地域であることを知れば、受け止め方は一変する。――こんなに美しい場所を、わたしたち人間は汚してしまった。

次ページ津波後の海岸を調査する筆者
ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • トクを積む習慣
  • 最新の週刊東洋経済
  • 自衛隊員も学ぶ!メンタルチューニング
  • ポストコロナのメガ地経学ーパワー・バランス/世界秩序/文明
トレンドライブラリーAD
人気の動画
商社大転換 最新序列と激変するビジネス
商社大転換 最新序列と激変するビジネス
「話が伝わらない人」と伝わる人の決定的な差
「話が伝わらない人」と伝わる人の決定的な差
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
渋谷駅、谷底に広がる超難解なダンジョンの今
自動車販売会社の『車検』争奪戦が熾烈なワケ
自動車販売会社の『車検』争奪戦が熾烈なワケ
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
日本企業は米中の板挟み<br>全解明 経済安保

先端技術をめぐる米中の争いは日本に大きな影響をもたらします。海外からの投資は経済を活性化させる一方、自国の重要技術やデータが流出し安保上のリスクになる可能性も。分断の時代に日本企業が取るべき進路を探ります。

東洋経済education×ICT