「サイコパス」の脳内構造はこうなっている ウソに長け、口がうまく、愛嬌たっぷり
「ミイラ取りがミイラになる」という言葉が存在するくらいだから、ガンの名医がガンに罹ることだって、警察官が犯罪者になることだって、決して珍しくはないだろう。しかし本書(『サイコパス・インサイド―ある神経科学者の脳の謎への旅』ジェームス・ファロン〈著〉)に登場する著者のケースは、冒頭から絶句する。
ある日、神経科学者である著者は、大量の脳スキャン画像をチェックしていた。やがて、その中の1枚にひどく奇妙なものが交じっていることに気がつく。彼の手にした画像の持ち主がサイコパスであることを確信するまでに、時間はかからなかった。しかしその後、彼は再び驚くことになる。なんとそれは、彼自身の脳スキャン画像であったのだ。
サイコパスの研究者が、サイコパスであった――。この衝撃の事実を皮切りに物語は始まる。科学者視点による所見と自分自身のこれまでの体験、2つの視点が交錯する中で際立っていたのは、両者の間に大きな乖離が存在するということであった。
そもそもサイコパスとは?
サイコパスの定義とは今日の科学の進展をもってしても、いまだ不確かなものである。一般的に「精神病質」と表されるサイコパスの特徴は「平板な感情の動き」に代表される対人関係における共感性の欠如である。映画『羊たちの沈黙』『ハンニバル』に登場するレクター教授のような、古典的なサイコパス像を思い出される方も多いだろう。
だが決して凶悪な殺人犯だけを指すわけではなく、人を思い通りに操縦しようとしたり、ウソに長け、口がうまく、愛嬌たっぷりで、人の気持ちを引きつけたりといった特徴も含むものとされる。むろん著者は人殺しや危険な犯罪を犯したことなどなかったし、それどころか科学者として成功し、幸せな結婚生活を送り、3人の子宝にも恵まれていたのである。
そもそもサイコパスと言われる人達の脳には、いったいどのような特徴が見られるのか。これを著者は、自身の画像も使いながら説明していく。
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