「サイコパス」の脳内構造はこうなっている

ウソに長け、口がうまく、愛嬌たっぷり

眼窩皮質(目の上あたり)と扁桃体周囲の活動低下がよくわかる(画像提供:金剛出版)

スキャン画像を眺めることで明らかになるのは、健常な人の脳と比べた場合に眼窩皮質と扁桃体周囲の活動が低下しているということであった。この領域の活動が低下すれば、人は衝動的になるとされ、他者の感情を共有することに大きな障害を有する可能性が高い。

つまりサイコパスは、情動にかかわる認知(=熱い認知)のために使用される<前頭前皮質>腹側システムの機能に乏しいが、理性的な認知(=冷たい認知)のための<前頭前皮質>背側システムは活発なままである。そのため良心の呵責や共感を伴わず、冷静な計画の元に他人を操ることができるのだ。

母親から聞かされた衝撃の事実

それならば、このような脳機能の特徴がいったい何によってもたらされたのか。調べ始めた矢先に、著者は母親からさらなる衝撃の事実を聞かされる。

それは、父方の家系に数多くの殺人者が存在し、そのいずれもが近親者を殺害した疑いがあるという事であった。だがそれでも著者が動じることなど、まったくなかった。なぜならサイコパスの脳を持ち、おそらく遺伝子もサイコパス由来であるという科学的事実をもってしても、彼自身の経験してきた幸せな人生とは符合しなかったからである。

そこで彼は発育過程で環境と遺伝子とは数多くの仕方で相互に作用し合う、いわゆるエピジェネティクスに注目する。たとえば三世代以上に渡り幼児のうちに社会的暴力を経験していると、好戦的な戦士文化が形成されてしまうため、暴力的になる可能性が高いという。いわゆる戦士の遺伝子と呼ばれるものだ。

これらの研究結果を元に、著者は「三脚スツール」という名の理論を確立していく。サイコパスの要因となる3本の脚とは、①前頭前野皮質眼窩部と側頭葉前部、扁桃体の異常なほどの機能低下、②いくつかの遺伝子のハイリスクな変異体、③幼少期早期の精神的、身体的、あるいは性的虐待、以上である。それは著者自身の人生との間にも、十分に折り合いをつけられるものであった。

そして彼はこの理論を広く世に知らしめるべく邁進し、実際にTEDで講演を行った記録なども残されている。

だが、この研究成果発表に乗じたカミングアウトもまた、パンドラの箱を開ける行為であった。

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