三菱電機、若手・中堅が挑む「組織風土改革」の全貌 改革は道半ばだが「変化の兆し」は見え始めてる

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風土改革とは「従業員の主体性」を取り戻す改革である。

上にモノが言えない言った者が損をする上の人間の顔色ばかりを窺い忖度する誰かが困っていても助けない……。そんな状況が蔓延している組織に競争力があるはずもない。

従業員が自由に自分の意見を述べ、侃々諤々(かんかんがくがく)議論し、共通の目的に向かって協力し合い、みんながノビノビイキイキと働ける環境を整える。それは三菱電機だけでなく、どの企業にとっても、最も大事な組織基盤である。

2022年12月、漆間社長は品質不適切行為を起こしたある工場を訪れた。現場で働く従業員たちと直接対話をすることが目的だった。

「この工場は1年前と比べて変わりましたか」という社長からの投げ掛けに対し、「業務プロセスなどが変わり、よくなってきた」という前向きな声がある一方で、ある班長からは「まったく変わっていない。逆に手続きが増えて、やるべきことに手が回っていない」という声も上がった。

漆間社長はその声に熱心に耳を傾けたあと、「忙しいのはよくわかる。でも、自分たちで乗り越えていこうとしないと、乗り越えることはできない。ただ働くのではなく、やりがいを持って働くようにしなければならない。みんなで力を合わせてチームにならないといけない」と変化を促した。

目指すは15万人の意識改革と行動変容

目の前の現実に追われる現場の変革は容易なことではない。三菱電機の風土改革もまだまだ道半ばである。

しかし、以前は、社長と現場の班長が直接対話する機会などなかった。班長が社長に本音を言うこともあり得なかったこうしたコミュニケーションが生まれていること自体が大きな変化である。

「健全で良質な組織風土」はけっして誰かが与えてくれるものではなく、自分たちで創り上げていくものであることを理解し、実践する従業員を粘り強くひとりずつ増やしていく「組織風土改革」の本質はそこにある

遠藤 功 シナ・コーポレーション代表取締役

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えんどう いさお / Isao Endo

早稲田大学商学部卒業。米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。三菱電機、複数の外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。2005年から2016年まで早稲田大学ビジネススクール教授を務めた。

2020年6月末にローランド・ベルガー日本法人会長を退任。7月より「無所属」の独立コンサルタントとして活動。多くの企業のアドバイザー、経営顧問を務め、次世代リーダー育成の企業研修にも携わっている。良品計画やSOMPOホールディングス等の社外取締役を務める。

『現場力を鍛える』『見える化』『現場論』『生きている会社、死んでいる会社』『戦略コンサルタント 仕事の本質と全技法』(以上、東洋経済新報社)などべストセラー著書多数。

 

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