三菱電機、若手・中堅が挑む「組織風土改革」の全貌 改革は道半ばだが「変化の兆し」は見え始めてる

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しかし、方針をとりまとめただけでは「組織風土」が変わるはずもない。

経営においては「戦略1割 実行9割」という言葉がよく使われる。どんなに素晴らしい戦略を立案しても、それは全体で見ればわずか1割にすぎない。その戦略を実行し、結果を出すところが9割を占める。

つまり、実行が伴わなければ、どんなに卓越した戦略も「絵に描いた餅」にすぎない。

「重苦しい組織」に風穴を開ける「さまざまな仕掛け」

これは組織風土改革も同様である。どんなに立派な方針を打ち出しても、それを組織内に浸透させ、社員たちの意識と行動を変えなければまったく価値がない

実際、2022年4月以降、変革プロメンバーたちはこの「実行の壁」に直面してきた。風土を変えよう、コミュニケーションを変えようと声高に叫んだところで、それに反応する人はごくわずか。

反対、抵抗してくれるならまだしも、多くの従業員は無関心、無反応だった「風土改革なんて自分には関係がない」「誰かがやってくれるだろう」といった冷めた眼で見ている人が大多数だった。

長い間に溜まってしまった「組織のおり」が沈殿し、組織内に充満する「重苦しい空気」を変えるのは容易なことではない。

それでも、メンバーたちは諦めずに、「重苦しい組織」に風穴を開けるべく、懸命に動き回り、汗をかいている。

たとえば、自動車用部品などを製造している姫路製作所では、変革プロメンバーたちの奮闘により、「改革の輪」が徐々に広がりつつある

姫路製作所は正社員だけで約5000人、協力会社なども含めると約8500人が働く大工場である。業務も多忙を極めており、従業員に余裕はなく、変革には前向きになれない人たちが大多数だった。

メンバーたちが協力を要請しても、「そんなことよりもっと先にやることがあるでしょう」「上が変わらないと、自分が動いてもムダ」「いきなりそんなこと言われてもわからない」などの冷たい言葉を浴びせられた。

そこで、メンバーたちは、まず上の人たちを巻き込むことに注力した。

所長や部長クラスに熱心に働きかけ、現場の生の声を伝え、いろいろな活動を仕掛けることへの了承と協力を得た。所長や部長たちをまず「仲間」にした。所長や部長たちとは、今でも毎月1on1のミーティングを行っている。

通常、1on1は上司が部下に声を掛けて行うものだが、ここでは「変革プロメンバー」が所長や部長に声を掛けて行っている。

次に、メンバーたちは「さまざまな仕掛け」を講じていった。外部講師を招いた講演会心理的安全性に関する研修他の製作所や他企業との交流会など、さまざまな取り組みを実行している。

「重く淀んだ組織」になんとか風穴を開け、「フレッシュな風」を吹き込もうとしている。私自身も姫路に何度も出向き、現場力についての講演会やワークショップを行っている。

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