しかし、三菱電機はグループ全体で約15万人の従業員を抱える巨艦である。
課長以上の管理職だけでも国内に5000人いる。これだけの大組織の風土をトップダウンだけで変革するのは至難である。
現場で働く一人ひとりがその気になり、自らの意識と行動を変えるボトムアップのアプローチが広がらなければ、「大組織の風土」を変えることはできない。
健全で良質な「組織風土」は誰かが与えてくれるものではなく、自分たちの手で創り上げていくものだということを理解し、実践する従業員を増やすことが変革の成否を握っている。
現場からの組織風土改革を推進するために、同社は2021年10月に全社変革プロジェクト「チーム創生」(以下、変革プロ)を立ち上げた。
漆間社長自身がプロジェクトリーダーとなり、社内公募で選ばれた45名の若手・中堅社員が、三菱電機の「組織風土」を刷新するために動き出した。公募には465名の応募があった。
同社の未来を担う若手・中堅メンバーが中心となり、「従業員たちが主体となって重く淀んでしまった会社を再生させたい」というのが漆間社長の思いであり、願いである。
「組織風土改革」の最優先課題は「3つの風土」の醸成
私は2021年9月に同社の顧問に就任し、若手メンバーたちと一緒に知恵を絞り、汗をかいている。同社は大学卒業後、私が約10年お世話になった古巣の会社である。何の恩返しもできずに辞めてしまった会社に少しでも恩返しができるチャンスをいただいた。
漆間社長は「組織風土改革」の最優先課題として「上にものが言える風土」「失敗を許容する風土」「共に課題を解決する風土」の醸成を掲げた。
どれも組織運営においては至極当然のことばかりだが、この当然のことが三菱電機では当然ではなくなってしまっていた。
変革プロメンバーたちはまず組織の実態を洗い出すために、現状分析を行った。各拠点に所属する302名のサポートメンバーの協力も得て、グループ内社員のべ8631名へのアンケート、2379名へのヒアリングを実施し、課題を幅広く抽出し、その原因・真因の究明を行った。
そして、2022年4月に三菱電機グループ風土改革「骨太の方針」を策定した。これは「劣化している風土を改善する施策」(マイナスからゼロへ)3項目、「新しい風土を築く施策」(ゼロからもっと素晴らしい明日へ)3項目、計6項目の大方針から成り立っている。
メンバーたちはとりまとめた「骨太の方針」をまず執行役に説明し、了承を得た。そしてその後、順次各拠点を回り、従業員向けの説明会を実施した。
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