一連の不正の背景として色濃く浮かび上がってきたのが、社内におけるコミュニケーションの断絶である。
深刻だった「コミュニケーションの断絶」
各事業本部内における上下、横のコミュニケーションが絶対的に不足していた。
また、本社と現場のコミュニケーションも十分とは言えず、組織運営の基本であるコミュニケーションが長年、機能不全を起こしていた。
上からの一方的な指示や通達ばかりが現場に降ろされる一方、現場からの声は上には届かなかった。現場の実態や問題を上司に伝えても、その声は途中でかき消され、現場は問題を抱え込んでいた。
現場の担当者が直接所長や部長とコミュニケーションすることも稀だった。組織内の上下のコミュニケーションのパイプが深刻な目詰まりを起こしていた。
その点については漆間社長自身も「どうしても相手に対して『そうじゃなくてこうだろう』とか先に言いたくなってしまう。私自身もどうやったら『聞く』ことができるようになるか、ということを考えた」と反省の弁を述べている。
また、事業本部制による縦割り意識が強く、事業本部間の人事異動は極めて限定的だった。各事業本部には複数の製作所がぶら下がっているが、製作所間での異動すら稀だった。組織のたこつぼ化が進み、狭い人間関係だけに依存し、不正が起きやすくなっていた。
さらに、本社と現場、経営層と現場のコミュニケーションの断絶も深刻だった。
ガバナンスレビュー委員会の山口利昭委員長は「(不正を)指示し共謀している人がいるだろうと調べたが、客観的な証拠はいっさい出ず、執行役はこういう問題が起きていると認識していなかった。本社と現場のあまりにも大きなコミュニケーションの断絶があったとしか思えない」と語っている。
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