紫式部は合理的「源氏物語」の作り方が実は凄い訳 読者が引っかかるポイントを拾い上げて解消

✎ 1〜 ✎ 13 ✎ 14 ✎ 15 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
二千円札の図柄に採用されている源氏物語(写真:ニングル/PIXTA)
日本の古典文学というと、学校の授業で習う苦痛な古典文法、謎の助動詞活用、よくわからない和歌……といったネガティブなイメージを持っている人は少なくないかもしれませんが、その真の姿は「誰もがそのタイトルを知っている、メジャーなエンターテインメント」です。
学校の授業では教えてもらえない名著の面白さに迫る連載『明日の仕事に役立つ 教養としての「名著」』(毎週木曜日配信)の第14回は、引き続き2024年のNHK大河ドラマの主人公、紫式部の『源氏物語』について解説します。
この連載は毎週更新です。著者フォローをすると、新しい記事が公開されたときにお知らせメールが届きます。
この連載の記事一覧はこちら

ちょっとした矛盾を解消するすごさ

『源氏物語』は、一言でいってしまえば「光源氏がさまざまな女性と恋愛する話」だ。しかしたくさんのヒロインが登場するなかで、最も光源氏の好きな女性の原型をつくったのは――おそらくこの人だろう。藤壺の宮である。

彼女は、前の帝の、4人目の娘だった。そのため身分も申し分なく、そのうえ美しいとのうわさ。藤壺の宮をよく知る典侍(上級の女官)は、「亡き桐壺更衣にそっくりな方がいますよ」という触れ込みで彼女を紹介した。

が、藤壺だって蝶よ花よと育てられたお姫様。「桐壺更衣はずいぶん意地悪されて、その心労で亡くなったらしいわ」といううわさばかりが出回る宮中、娘を嫁がせていいものか、藤壺の母はかなり渋っていたらしい。しかし心配していた母が亡くなってしまう。不安になった藤壺を見て、周囲の人間はこんな状況だったら宮中に嫁がせて、帝に幸せにしてもらったほうがいいだろう……と言う。

「亡き元カノに似ている」という理由で結婚するなんていかがなものか、と藤壺も思っただろうが、しかし宮中にいれば自分の暮らしはとりあえず安泰なのだ。帝もずいぶん来てほしそうにアプローチをかけている。そうして藤壺は宮中へ行くことを決めた。

『源氏物語』の物語としてのすごさはいろいろあるが、こういうちょっとした矛盾の解消、そんなことありえるの?と読者が引っかかるポイントをつねに拾い上げるところは、かなり精度が高いなと私は思う。

次ページ紫式部は合理的
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事