NHK大河はどう描く?「紫式部と道長」微妙な関係 パワハラ?色っぽい展開?両者の和歌を読み解く

✎ 1〜 ✎ 9 ✎ 10 ✎ 11 ✎ 最新
拡大
縮小
紫式部と藤原道長
紫式部と藤原道長の関係性に迫ります(左イラスト:りうん/PIXTA、右イラスト:UU/PIXTA)
日本の古典文学というと、学校の授業で習う苦痛な古典文法、謎の助動詞活用、よくわからない和歌……といったネガティブなイメージを持っている人は少なくないかもしれませんが、その真の姿は「誰もがそのタイトルを知っている、メジャーなエンターテインメント」です。
学校の授業では教えてもらえない名著の面白さに迫る連載『明日の仕事に役立つ 教養としての「名著」』(毎週配信)の第10回は、『源氏物語』の作者で、2024年のNHK大河ドラマの主人公でもある紫式部の『紫式部日記』について解説します。
この連載は毎週更新です。著者フォローをすると、新しい記事が公開されたときにお知らせメールが届きます。

この連載の記事一覧はこちら

藤原道長の家から始まる「紫式部日記」

当時にしては例外的なほど漢詩や漢文に詳しく、そのことに過剰ともいえるコンプレックスを持っていた天才女性作家、紫式部。2024年の大河ドラマはそんな彼女が主人公らしい。なかでも藤原道長との関係性が主軸として描かれるようである。

それでは『紫式部日記』において、藤原道長はどのような存在としてつづられているのだろう? 大河ドラマを予習するため、『紫式部日記』藤原道長登場シーンを読んでみよう。実は現存する『紫式部日記』の冒頭は、中宮彰子の出産のため藤原道長邸にいる場面。そう、紫式部の日記は、道長の家から始まるのだ。

<原文>
秋のけはひ入り立つままに、土御門殿のありさま、いはむかたなくをかし。池のわたりの梢ども、遣水のほとりの草むら、おのがじし色づきわたりつつ、おほかたの空も艷なるにもてはやされて、不断の御読経の声々、あはれまさりけり。

やうやう凉しき風のけはひに、例の絶えせぬ水のおとなひ、夜もすがら聞きまがはさる。

(※以下、原文はすべて『紫式部日記 現代語訳付き』(紫式部、山本淳子訳注、角川ソフィア文庫、KADOKAWA、2010年)

<筆者意訳>秋の気配が濃くなるにつれ、道長さまのお邸の様子は、美しくなる。言葉にできないくらい。池のほとりのこずえたち、庭の遣水に茂る草々、それぞれが色づいている。空もたいてい鮮やかに広がる。安産祈願のお経を唱える声もずっと聴こえてくるけれど、こういう情景の中だといっそう素敵に響いてくる。

夜になるにつれ、風はすこしずつ涼しくなってくる。いつものとおり、せせらぎはずっと流れている。風の音と水の音が混ざり合った音は、夜更けまで、ずっと私の耳に届く。

日記として、素敵なことこのうえない書き出しではないだろうか。『枕草子』と並べても遜色ない「をかし」な情景描写である。紫式部にとって道長の邸で過ごした日々は、華やかな儀式に沸き立つものというより、こういうちょっとした秋のお庭の美しさに魅入られたものだったのだろう。邸の描写をしようとして、まず華やかさではなく秋の優美さを綴るあたり、小説家らしさも見られる。

次ページ藤原道長邸は権力の象徴のような場所
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
倒産急増か「外食ゾンビ企業」がついに迎える危機
倒産急増か「外食ゾンビ企業」がついに迎える危機
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT