あらかじめ断っておくが、私は決してファッショニスタではない。しかし、生まれも育ちもイタリアなだけに、おしゃれの基本ぐらいは心得ている。子供のころからお母さんに色やアクセサリーの選び方を教えられたり、注意をされたりしてきた。それは多分、日本の子どたちもがお箸の持ち方や行儀を教えられるのと同じように。
そんな教育を受けてきた私が来日したのは10年前だが、その当時も、今も思わず目を疑うようなファッションに出くわすことがしばしばだ。ズボンの上にスカートを履くという、「愚の骨頂ファッション」の流行はお陰様で去ったようだが、オシャレしてこれ見よがしに行き交う人々を見ていると、色々なことがどうしても気になってしようがない……。
清少納言は平安時代のココ・シャネル
なんてとりとめのないことを考えていたら、清少納言のことがふと頭に浮かんだ(普通、思い浮かばないでしょうけれど……)。だって清姐さんは日本が世界に誇る最大級のファッションリーダー、抜群のセンスの持ち主、エレガンスの大使と言っても過言ではない人物。もう言ってしまえば、平安時代のココ・シャネル的存在だ。
清少納言は枕草子の作者として知られているが、その作品は1001年頃に書かれたと言われ、日本における最古の随筆文学とされている。作者は一条天皇の中宮定子に仕えた女房で、漢文も普通に読めてしまう、聡明かつ才気煥発な女性だったそうだ。
枕草子にはいろいろな楽しみ方があるが、学問の常識からかなり逸脱している私は、ページをパラパラとめくって、その日の気分に合わせて少しずつ読み進めるのが好き。何度も読んだことがある章段もあれば、途中で飽きてしまったところもある。しかし、どの話をとっても峻烈な筆で描き出された清姐さんの美意識の高さに、ひたすらうっとり。
そこでやはり思う。女子力アップだの、ゆるふわ女子だの、大人カワイイだの、キラキラ女子だの、という言葉をよく耳にする昨今だが、イイ女の称号を手に入れて、輝く憧れの存在になりたいのであれば、「をかしき女子」を目指すべきだと。その点において、清少納言は、手紙の書き方からトータルファッションコーディネート、そして正しい恋のお作法まで、必要なことを全て教えてくれる。
行間からは豊かな感性と洗練されたセンスが感じ取れるだけではない。女として絶対に押さえておくべき、これさえ守れば大丈夫という鉄則3か条を、彼女が時空を超えてこっそりと届けてくれているのだ。
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