■其の一、まずは世界を知ろう
お姐さん、ビシッと言ってくれる! この段を初めて読んだときに、「えせ幸ひ」という言葉が目に留まり、印象に残った。清少納言の時代といえば、今から千年以上も前だ。華々しい着物を何枚も重ね、家の中にたれこめて暮らし、男性が忍び込んでくれるのを待つ存在というイメージが強い平安女性だが、時代はどうであれ、デキる人は言うことがさすが違う!人からもらうもの――経済的な安定、安住――は「形だけの幸せ」。外に出て、多くの人と接し、ときに痛い目に遭う、つまり自立することが、清姐さんのいう本物の幸せ。これ、カッコよすぎませんか?
誰がためのオシャレなのか
ところで、典侍というのは、内侍司という役所の次官のポジションで、宮仕えをしている女性の中では相当ハイレベルの役職。言い換えると、しばらくの間部長になってみると良いわよ、と言っているようなもの、かなりハイスペックの話なのだ……。
少しばかり親近感を持ったところで、所詮あなたたちは下々に過ぎないわよ、と一蹴して読む人の心をやりで突き刺すようなことをいうのは清姐さんの特徴なのだ。「利口ぶって、得意顔でうぬぼれている」と、天敵の紫式部が言う気持ちもわかるが、12センチのピンヒールを履いて、ブリーフケースを持ったキャリアウーマンの清少納言が丸の内を颯爽と歩くイメージはやはり憧れてしまうもの。
■其の二、おしゃれは誰のためでもなく、自分のためである
この文章はあまりにもきれいすぎて、拙い超訳を添えるのが恥ずかしいので、大庭みな子先生の現代語訳を紹介することにさせていただく。
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