
在原業平が主人公とされている「伊勢物語」には美しくもスキャンダラスな和歌がたくさん(写真:bee/PIXTA)
普段から古典文学が好きと言いふらしているせいか、まじめなイメージをもたれがちな私だが、実はかなりミーハーだ。
古典だってもとはエンターテインメントで、ミーハー族から火が点いた。源氏物語が流布されたときには、菅原孝標女のように、読みたくて正気をやや失っていた人もいたくらいだし、「源氏物語」や「竹取物語」といった本を持っているだけでステータスだった。
ミーハー度マックスの「伊勢物語」
今では、古典は「試験に出る、あの難しいやつ」程度にしか思われていないかもしれないが、平安時代では最高に面白くてカッコイイ読み物だったわけである。
その中でもミーハー度が最高潮なのは間違いなく「伊勢物語」だ。自由奔放に人生を謳歌したとされる歌人、在原業平とおぼしき男が主人公となって繰り広げられるこの短編歌物語集は、フィクションといえ、本当の出来事もちょいちょい挟まっていたというから、今で言えば差し詰めゴシップ誌のような存在だろうか。
人物名はほとんど出ていないが、当時の貴族社会は非常に狭かったため、和歌一つで誰の話なのかすぐにピンと来ていたらしい。ここに話が出てしまったことを、気に揉んでいた貴族も結構いたに違いない。
さて、その伊勢物語のその出だしはこうだ。
むかし、をとこ、うひかぶりして、平城の京、春日の里に、しるよしゝて、狩に往にけり。
【イザ流圧倒的意訳】
昔、あるオトコが元服を迎えて、晴れて大人の仲間入りを果たした。そして領地があったので、奈良の都春日の里にルンルンと狩りに出かけて行った。
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