新たな男性を迎える準備をしているところに、突然の夫登場で取り乱す女性。普通だったらパニックに陥るはずだが、田舎出身とはいえ、さすが平安期の貴婦人。どんなにうろたえても、枕詞がばっちり入った歌をパッと出せるわけだ。
それを受けた男の答えは…
それだけ!?!?「うるはしみせよ(仲良くして下さいな)」と詠んだのは、男の強がりなのか。今までずっと辛い思いをしてきた妻を思ってこその愛情なのか…。
あっさり引き下がるってやっぱり…
しかし、長い間会っていない妻とやっと再会が出来たというのに、「今夜結婚するんだわ」と告げられたら普通はこんなにあっさりと引き下がらないはずだ。手紙一つも寄こさず、ノコノコ帰ってきて、ちょっとカッコよく締めくくろうとしているんじゃないかと、かなり違和感を覚える。
だから、私はこう思う。この男は平安京に絶対に女を囲っていたと。しかも、この片田舎にはいないような、うんと洗練された女を。
それならせっかく新しいスタートを切ろうとしている妻をそっとしておけばいいのだが、「梓弓ま弓槻弓」――色々あった2人だからこそ、音信不通のまま終わらせるのは、すっきりしなかったのかもしれない。男性不信のせいか、二股説を捨てられない私は、やや手の込んだキープだとにらんでいるが…。
男ならばやはりそこで「オイ待ぁてよッ!」と勢いよく乗り込んできてほしいところ。まったく男ってやつは平安から平成まで相変わらず女心をまったくわかっていないなと、このくだりを何回読み返しても同じ感想になる。(ちッ)。
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