ダメンズ確定!在原業平の破天荒すぎる恋愛 平安のゴシップ誌「伊勢物語」の和歌は強烈だ

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伊勢物語の中に登場する歌は業平が詠んだ作品が多い。しかし、ここで注意しなければならないのは、綴られているエピソードのすべてが必ずしも業平の話ではないということだ。また前述の通り、伊勢物語は複数の人に書写されており、そのたびに手を加えられたり、部分的にカットされたり、構成まで変えられている。

それゆえ、たとえ半分架空の人物とはいえ、その恋愛の数は一人の男性が経験しうるよりはるかに多く、バリエーションも一人の作者が想像しうるよりはるかに豊富だ。つまり、伊勢物語とは、平安時代のさまざまな知恵や経験が詰まった、甘酸っぱい恋愛書なわけである。

伊勢物語のメインは何といっても歌

そのスキャンダラスな内容ゆえ、ムカオトや男女の昼下がりの情事に関心を奪われがちだが、この作品は歌が中心だ。それぞれの段に物語が一応展開されているものの、それは歌に添えられたサイドディッシュに過ぎない。実際、あらすじはどれも雑で突っ込みどころ満載。それでもこの作品が輝いているのは、歌が放つ圧倒的な魅力があるからにほかならない。

平安時代には、歌は感情を一方的に表現するためのものだけではなく、日常生活と密接に結び付いたコミュニケーション手段の一つだった。貴族の男性の間では漢文が用いられていたが、女性同士、または男女間は主に歌を通してお互いの感情や思考を確かめ合っていた。だからこそ、伊勢物語に使用されている歌一つひとつが独自の世界観を持ち、散文をさほど必要とせず、むしろ散文の意味を補う役割を担っている。

歌が重要な役割を果たす段はたくさんあるが、その中でも有名なのが「梓弓」だろう。

場所はのどかな田舎町。そこに仲の良い夫婦が静かに暮らしている。しかし、夫が仕事で遠く離れた土地に行ったが最後、消息不明のまま早くも3年近くが経ってしまう。残された妻は、その間ずっとモテモテだったものの、夫のことを忘れられず、情事のお誘いを断り続けた。

しかし、ある日「もうあの人は帰らないんだわ…」と思い切って新しい男を迎えることにする。ところが…

次ページいよいよ男性を迎え入れようとしたその夜に!
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