ゼロコロナ緩和でも経済が回りそうにない中国 ファンキー末吉が見た中国広州・マカオでのドタバタ

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銀川からは、私が参加している布衣のツアー日程の延期のニュースが飛び込んで来た。同様に感染者爆発によって興行が成り立たないということだ。なんとか興行が成功した「张蔷(ZhangQiang)」のライブでは、最前列に防護服を着てコンサートを楽しむファンもいた。

防護服を着たまま、ステージの最前線でコンサートを楽しむファンがいる(写真・筆者撮影)


そんな中、また突然公演がキャンセルになった2022年12月25日に仕事が飛び込んで来た。今度はマカオで行われるイベントのドラマーが来れなくなったので、リハーサルもせずにぶっつけ本番で叩けるドラマーということで、また私に白羽の矢が立ったということだ。

こんな仕事が続けて飛び込んで来るということは昔では考えられなかったことだが、思えばきっとドラマーがコロナに感染したのだろう。今の中国ならではである。だからこそ今やミュージシャン界隈では「阳过了吗?(YangGuoLeMa:感染した?)」というのがあいさつになっているのだ。(羊は陽性の陽と発音が同じのため、ネットスラングでは、阳の字の代わりに羊の絵文字を使う)

その昔、中国では「吃饭了吗?(ChiFanLeMa?:ご飯食べた?)」が挨拶代わりだったが、今では「阳过了吗?(YangGuoLeMa:感染した?)」というのがあいさつとなっている点が、まさに「時代」を感じさせる。せっかく私は「阳过(YangGuo:感染した)」無敵状態なので、こんな仕事を受けない手はないのだが、問題は場所が「マカオ」であるということだ。

「マカオは中国? 外国?」。中国人にとってマカオは、「中国」である。中国のIDを持っていればパスポートなしで行き来ができるが、私たち外国人にとっては、マカオはパスポートが必要な「外国」である。

マカオは外国か、国内か

中国からマカオに入る外国人は、一度中国を「出国」してからマカオに「入境」する。パスポートにはちゃんと出国スタンプが押されることになるのだが、これが私にとって問題となる可能性が出てきた。「国外から入国した外国人は、半年間演奏活動ができない」というのだ。

これは、政府からのちゃんとしたお達しではないかもしれないが、演奏許可を出す機関がゼロコロナ政策に忖度しているのか、許可を出したがらないという状況があった。

実際、私は布衣のツアーのために「出入国証明」を取ってくれと言われたことがある。ところが、北京の出入国管理局に行って聞いたが「そんなものは発行できない」と言われた。

周りを見渡してみると、台湾や香港の人間には自動で発行できる機械があったが、そもそも外国人に対してはプライバシーの侵害になるということで、政府がそれを発行できないということだ。

結局パスポートの最終入国のスタンプの写真で代用することとなったが、「これが最終入国のスタンプである」という証明がないわけだから、想像するにこれは形骸的なシステムでそんなに大切なことではないように思われる。

実際マレーシアでの演奏許可を取る時には、マレーシア政府からはパスポートの全ページをスキャンして送ることを求められた。これこそが「出入国証明」なのだから、それを提出させられない段階で、この「国外から入国した外国人は半年間演奏活動ができない」というのは眉唾物である。

マネジャーと相談して「マカオだったら大丈夫だろう」ということで正式にこの仕事を受けた。マネジャーにとっては「マカオは中国」なので安心したのだろう。しかし外国人にとっては「マカオは外国」である。こんな問題が出てきた。

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