でも安心してください。私にはよく理解できます。あなたとそっくりな夫婦と、長く親しくしてきたからです。私の知人である竹岡繁さん(仮名)と孝子(仮名)さん夫婦も、亭主関白で自己チューの夫と、「女性はそれに従ってなんぼ」という考えを持っていた妻の組み合わせでした。
不満は言葉で伝えないと伝わらない
繁氏は「不満ならいつでも離婚してやる。絶対に引き止めないし、迎えにも行かない」が、結婚当初からの口癖で、妻のいたわり方など、彼は知りません。
子育てとわがままな夫と姑に尽くすことで、その日その日が精いっぱいの孝子さんは、不満を言う間やその勇気を作るより、その日を無事にやり過ごすことの方が切実でした。不満や要望を訴えて、2人から倍返しされることを考えれば、諦めるほうが家内安全と、体が学習したそうです。
それが10年、20年と続いたある日、知る人ぞ知る「スイカ事件」が起きました。孝子さんの姑はスイカが大好きで、1日に大きなスイカ1個をひとりで軽く食します。家族や飛び入りの客用も考えると、常にスイカのストックが必要です。たまたま来客が多く、スイカがよく出て、夜の姑の湯上りにスイカを切らした時がありました。「私に食べさせるスイカがそんなに惜しいのか!!」と、大事件に発展したのです。
それ以来、万が一、あの大きなスイカを買いに行けない時間帯にスイカが切れる恐怖を考えると、孝子さんは、自分がスイカを食べる気など起こらなかったそうです。
ある日、姑の友人たちが集い、姑がスイカを切ってお皿に取り分け、みんなに配りました。そこにいた嫁の孝子さんの分だけありません。客たちがどうして孝子さんの分がないのか尋ねると、姑は「この人はスイカが嫌いみたい。食べたあとがないもの」と真顔で言ったそうです。友人たちが呆れて「すっぱいわけでも、辛いわけでもないスイカが嫌いな人っていないでしょう。孝子さんが食べる間がないくらい、あなたが食べているのでしょ。気が利かないわねぇ」と、一同で笑ったそうです。
このように目に見えて簡単なことでさえ、相手によっては言わないと伝わらないことを、孝子さんは悟ったといいます。阪本様、「自分の不満は言わなくとも、相手は少しはわかっているはず」を前提にしてはいけません。人はそれぞれ、考え方も感性も違うのですから。
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