日本経済は渡航制限の緩和などコロナ影響を脱しつつあるものの、世界的なインフレ圧力や、それを受けた欧米での急激な利上げによる世界経済の減速懸念などの逆風に直面している。
12月16日(金)に発売した『会社四季報』2023年1集(新春号)では、原材料高などで増収減益の見通しとなる企業が多い一方、コロナ影響の一服に加えて、DX(デジタルトランスフォーメーション)投資の恩恵を受ける企業や円安効果などで上振れる企業も目立つなど、今期業績見通しで明暗が分かれる2極化も進んでいる。
四季報予想を集計した結果、今期(2022年10月期~2023年9月期)の予想営業利益は前期比15.9%の増益の見通しとなった。製造業の営業増益率が同7.6%にとどまる一方、非製造業はコロナ禍からの本格的な需要回復に加え、ソフトバンクグループ(9984)の黒字転換も効いて、同34.7%の大幅増益となる見通しだ。
銀行、保険を除く31業種のうち、今期営業減益となる見通しなのは、パルプ・紙、石油・石炭、ゴム製品、非鉄金属、水産・農林など10業種。電気・ガスは赤字の見通し。その一方で、残る21業種のうち、陸運や情報・通信業、鉱業などが大幅増益となり、空運は黒字に転換する見通しだ。
円安の恩恵もあり自動車など輸送用機器も前期比11.4%増にやや増額されており、業績面に明るい兆しもあるが、インフレ抑制のために中央銀行が急ピッチの利上げを進める欧米経済への先行き懸念が引き続き株価の頭を抑えているといえそうだ。
さて、四季報では毎号、いろいろなランキング特集を組んでいる。新春号で掲載した1つが「連続2桁増収ランキング」だ。過去2期とも2桁増収で、来期も2桁増収が予想され、今期の営業増益が予想される企業に限定して、四季報新春号の今期予想増収率の高い順でランキングした。
コロナ禍1年目の2020年は増収が続くグロース株の人気も高かったが、コロナワクチンの普及と利上げ観測の高まりとともに人気は離散。低PER(株価収益率)や配当利回りの高いバリュー株が選別されるようになった。
欧米で高水準の利上げの一服が見込まれる今後は、再びグロース株が再評価されそうだ。なにより一部のグロース株で割高感が薄れている。PER100倍超えが当たり前だったグロース株だが、利益成長が進む中でPER20倍前後の銘柄がゴロゴロしており、新年度の大化け銘柄も見つかりそうだ。
積極的なM&Aで高成長を続ける
連続2桁増収組で今期の増収率トップとなったのは、SMS(ショートメッセージサービス)のパイオニア的存在のアクリート。ベトナム同業など複数企業の買収効果もあるが、利益を増やしたのはむしろ本体だ。自治体のコロナ陽性者への連絡手段での利用が急激に膨らみ利益を押し上げた。
会社側は一過性の影響とみて2022年10~12月期の計画には織り込んでいないが、足元の状況を考えれば、上方修正した会社計画のさらなる上振れも期待される。来期の反動減のリスクはあるが、企業での認証用途が着実に伸びており、自治体でコロナ関連以外での使用も膨らめば、さらなる成長も期待できそうだ。
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