ただ、あんな「とんでもない」性差別のコマーシャルを作ることができる味の素でさえ、このマークを取っているのですから、「マークを持っていれば安心」とはいきません。
そもそも外資を含め、大都市部の大手企業やベンチャー企業に勤めれば、20代の間、ものすごいペースで働かされるというのはよくあることです。そして私は、そのこと自体をそれほど悪いことだとは思いません。
もちろん体を壊すまで働くのは論外です。絶対にやめてください。ですが、20代はまだ能力を蓄積していく時期で、私自身、夜中までというより夜明けまで論文を書いていました。バブルのさなかに年収が200万円にも届かなかった、20代の終わりまでです。ただ、こんな働き方で子どもを育てたりすることは、当然できません。
WLBは男性にも重要な指標
先日、ノーベル賞を取った日本の研究者が、「年末年始以外はずっと研究室にいた」とおっしゃっていました。すばらしい努力だと思いますし、私のような凡庸な人間がとやかく申し上げるべきことではありませんが、私は「ノーベル賞を2つくれてやる」と言われても、そんな働き方はしたくありません。したがってWLBの指標というのは、決して女性だけのためではなく、男性の働き方にも参考になるデータなのです。
家庭を作り、将来設計が決まってくる時期なので、就活では30~40代の働き方を、OGやOBによく聞いてみてください。その年代でどの程度残業があり、子持ちの人はどんな働き方をしているかが重要なポイントです。
女性の勤続年数のデータは、『就職四季報』女子版ではいちばん目立つところに載っていますね。女性は、第1子の出産後も働き続ける人の割合が4分の1しかなく、これが女性の生涯収入、さらに家計収入を大幅に下げる要因になっています。
過去の連載で何度も指摘したとおり、女性正社員の平均年収は約350万円なので、出産を機に辞めることで失う所得は1億円に上ります。首都圏などの条件のよい企業なら、逸失利益は2億~3億円ということも充分ありうるでしょう。ですので、勤続年数は大変重要なデータなのです。
同じ意味から、女性社員の既婚率も重要です。社員が既婚か未婚かを企業が把握すること自体が、プライバシーの侵害になりかねず、難しい問題ではありますが、これも『女子版』にしか出ていない大事な情報で、男子も要チェックです。
「女性社員の既婚率が高いところは、おばさんばっかりだからやめておこう」なんて、バカなことを考えてはいけません。結婚したり出産したりしたら、女性が働き続けられないような会社って、どう考えても男性にとっても「ブラック」な感じのする会社ではないですか?
それでは、WLBを重視する会社かどうかの、簡単な見分け方をお教えしましょう。いつも東京大学の女子学生に伝えていることです。
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