恐るべき重さ!本で床は抜けるのか

愛と悲しみの蔵書物語

たとえば「電子化するか否か」問題。蔵書のほとんどをデータ化または処分したノンフィクション作家の武田徹さんや『困ってるひと』著者の大野更紗さんといった作家さんに加え、自炊業者にまで取材の手を広げて、電子化の長短を探っていく。

データ化したけど……「やっぱり紙がいい」

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武田さんと大野さんは自炊や電子書籍を合わせて数千冊をデータ化した電子化の大先輩だが、紙の方が読みやすいという意見で一致していたのは印象的だった。ほかにも「背表紙が見えないと読まなくなる」「洋書は辞書を使える分電子が良い」「電子化や処分は一気にやり過ぎると後悔する」など経験に裏打ちされた教訓もちりばめられているので、蔵書スペースに頭を悩ます人にとって参考になる部分は少なくないだろう。

さて、各方面への取材を通して床抜け問題や蔵書問題を幅広く考えてきた著者だが、その身に突然危機が訪れる。とはいっても床が抜けたわけでもない、蔵書が散乱したわけでもない。

簡単に言うと、積み重なった本の山よりも先に、夫婦関係が崩壊してしまったのだ。床抜けや倒れてくる本の山などいろいろな危機が描かれる本書だが、正直この最終章の部分がいちばんリアルでスリリングだ。家庭を持つ人にとっては、「家族の理解」こそが蔵書問題の要諦なのかもしれない。僕も将来が少し不安になった。一部始終は是非本書を読んで確かめてほしい。

手に負えなくなった蔵書の山。人によって規模は違えど、どんな山も何らかの物語をまとっている。それは持ち主の歩んできた知的探求の道程であると同時に、増殖する本と限られたスペースとの間で繰り返された格闘の軌跡でもある。

本書に詰まった幾通りもの蔵書物語には、夢や哀しみや諦めがつきまとっている。それらを読んでいくうちに、自分自身の物語にも自然と思いが馳せられるはずだ。比較するのもおこがましいが、自分も積読タワーに居場所を奪われるひとりとして、そこに向き合う勇気をもらった気がする。

蔵書で圧迫されていた心に少しスペースが空くような本書、HONZ読者の方々に是非オススメしたい。

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