恐るべき重さ!本で床は抜けるのか 愛と悲しみの蔵書物語

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5000~6000冊を所有していた小山さん(仮名)。地震をきっかけに部屋の床が抜けた結果、何百万という弁済金を大家に支払って退去を余儀なくされたという。著者との電話でのやりとりを見るだけでも、そのショックは察するに余りある。

「お聞きして疑問に思ったことがあります。たとえば弁済金の具体的な額ですが……(以下略)」
 「……」
 「もしもし」
 「……この話そろそろやめてもいいですか。名前? 匿名にしてくれれば何を書いてもいいです。……ガチャ」

 

とはいえこんな事故はそう頻繁に起こるものでもないので、床抜け話は全体の一部に過ぎない。本書の大部分を占めるのは、床抜けよりも前の段階(という言い方も変だが)、蔵書に関するあれこれである。

掘り出したらきりがない、本との格闘

本との格闘という意味でいえば、ずば抜けているのが2008年に亡くなった評論家の草森紳一さんだ。その生活環境は、まさに異空間。「2DKに約3万冊」「まったく本が置かれていない場所は浴室のみ」「カニ歩きでしか移動できない」と言われても、文章としてはわかるが、頭の中で像が結ばれない。そんな状況のため、亡くなった時にもひと騒動あったそうだ。

部屋には所せましと本が積み重ねられており、遺体はその合間に横たわっていた。あまりの本の多さに、安否を確認しに訪れた編集者でさえ、初日は姿を見つけることができなかった、という。(『読売新聞』2008年7月30日付)

 

これぞ、本好き冥利に尽きる、すさまじい死に方。

本書はこうした蔵書に関する逸話が盛りだくさんで、単純に読み物として面白い。

立花隆さんや故・井上ひさしさんなど10万、20万という規格外の蔵書を持つ巨人たちや、18万冊ものマンガを所蔵する「館」など、そのスケールには圧倒されるばかりだ。

結局ぶっとんだ話ばかりなのかと思いきや、そんなことはない。蔵書問題に苦しむ本好きにとって、身近な話もしっかり書かれている。

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