老子が説く「人の下に立て」が成功への道になる訳 道徳論ではないリアリズムに基づいた処世術

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『人の下に立て』は現代の価値観へのアンチテーゼ(写真:mits/PIXTA)
日本でもよく読まれている『老子』には、本当は何が書かれているのでしょうか。実は、『老子』は、よく言われるように「あるがままでいい」「流れに身を任せて生きよ」と説いているわけではなく、「処世・謀略」のすべを教える書なのです。本稿は『老子』を徹底的に「成功」のためのリアリズムの書として読み解く『真説 老子:世界最古の処世・謀略の書』より一部を再編集のうえ、その処世の戦略である「柔弱」の考え方を解説します。

『老子』についてのありがちな誤解

『老子』という中国古典についてのありがちな誤解として、「流れに身を任せて生きよ、という教えを説いている」というものがあります。ここではっきりさせておかなければならないのは、『老子』の教えはそんな消極的なものではないということです。むしろ、『老子』はもっと積極的に現実の中で生き残り、物事を成し遂げるための戦略を説いている。では、それはどのようなものであったのでしょうか? 

まず前提として、『老子』の基本的な世界分析として、人と争って勝ち、人の上に立とうとする人間の身には、必ず周囲から恨み、憎しみ、妬み、嫉妬といったマイナス感情が集まり、その人間を亡ぼすというものがあります。だからこそ、『老子』は生き残り、物事を為すための基本戦略として、

人と争わず、人の下に立つ

ということを勧めます。これを「柔弱」といいます。そして、この「柔弱」戦略の内容をより具体的に説いたのが、有名な「上善は水の如し」で始まる第八章です。

最上の善とは、水のようなものだ。水は万物に利益を与えながら争うことがなく、人々が嫌がる場所にいる。だから、「道」に近いのだ。(1)身を置くのは低いところがよく、(2)心はうかがい知られないのがよく、(3)人と交際するときは思いやりに従うのがよく、(4)人を動かす言葉は「信」に基づくものがよく、(5)政治は目の前の人民をよく治めるのがよく、(6)なす事は「道」に任せるのがよく、(7)動くのは時機をとらえるのがよい。そもそも争わない。だから、あやまちもない(※番号は筆者が追加)

まず、前半の「水は万物に利益を与えながら争うことがなく、人々が嫌がる場所にいる」です。これは、まさしく、人と争わず、人の下に立つ「柔弱」戦略の基本的姿勢を説いたもの。『老子』謀略術を実践するものが、あえて人の下に身を置き、困っている人間を助けるために動く、その在り方を水にたとえたものです。

そして、続いて『老子』の著者は、「柔弱」戦略を実践するための七つのルールを挙げています。一つひとつ見ていきましょう。

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