麻布中の入試に「政府の人権侵害」が出題された訳 社会課題を映し出す鏡としての中学入試問題
中学入試問題は「最初の授業」といわれています。その学校の社会科の先生が、いま子どもたちにいちばん考えてほしいテーマを選んで、オリジナルの問題文を執筆します。「いまの社会のここがおかしい。ここを変えていかなきゃいけない。そのためにはどんな方法があるか?」という問題意識が込められています。拙著『中学入試超良問で学ぶニッポンの課題』でも述べているとおり、中学入試の社会科は現実社会を映す鏡なのです。
たとえば2022年の麻布中学の問題文のテーマは日本に暮らす外国人です。小学生の子どもでもよく利用するコンビニのシーンから文章は始まり、日本が東アジアで植民地支配を行っていたころの歴史をさかのぼり、その経緯から、さまざまな立場の外国にルーツをもつ人々が日本社会のなかに溶け込んで暮らしていることを解説してくれます(表1が問題文に添えられている)。
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日本の難民認定手続きの問題点は何か?
そのうえで、日本政府の難民政策について批判的に、「政府の都合でその制度が二転三転していることは事実です」とまで言い切ります。検定教科書ではきっと書けないことです。実際の問題を見てみましょう。
1 迫害のおそれを感じたのはいつからですか。根拠を具体的に答えてください。
2 あなたが帰国すると、どのようなことになるか、具体的に答えてください。
3 あなたが国にいたとき、上記の理由、その他の理由で逮捕されたり、その他身体の自由をうばわれたり暴行などを受けたことがありますか。
4 あなたは、あなたの国に敵対する組織に属したり、敵対する意見を表明したりすることはありますか。
5 現在、生活費用は何によってまかなっていますか。
6 もともと住んでいた国に日本から送金をしたことがありますか。
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