麻布中の入試に「政府の人権侵害」が出題された訳 社会課題を映し出す鏡としての中学入試問題
要するに、実際に日本政府が行っている難民審査の手続きに対する批判を、解答用紙に書かせるのです。
「難民」の定義からわかるように、審査では迫害のおそれがあるかどうかが評価されるべきであって、「3」の質問のように、具体的に迫害を受けた経験があるかどうかは関係がありません。
難民も、日本人と同じように人権が守られなければいけないという観点からすれば、「4」の問いは、基本的人権の一部として守られるべき精神の自由を侵害する可能性のある質問だとも考えられます。
「5」に対しては、そもそも「難民」の定義に当てはまるかどうかを審査するのに、どうやってお金を得ているかなんて関係ないという論理で対抗することが可能です。
たくさんの解答の仕方があることがわかるでしょう。これを12歳でも書ける端的な文章で表現すれば、出題者の意図に沿った答えになるはずです。
2021年3月、出入国在留管理庁(通称、入管)の名古屋の収容施設で、スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが33歳の若さで亡くなりました。ウィシュマさんが名古屋入管であまりに非人道的な扱いを受けていた事実が次々に明るみに出て、日本の入管行政のあり方に国の内外から大きな批判が寄せられました。この設問も、そういう問題意識からつくられたものだと推測できます。
戦争や財政破綻などが起これば、誰だって、いつ難民になるかわかりません。自分が難民として見知らぬ国にようやくたどり着いて、やっと助かると思ったら、制服のひとたちに囲まれて、このようなナンセンスな質問を続けざまに投げかけられたらどう感じるでしょうか。
技能実習生の人権を守るには?
4000字以上におよぶ問題文はその後、「技能実習生」制度についても「一見、日本で働きたい外国人にとってはよい方向に変わったように見えますが、これも日本の都合であることにかわりはありません」と批判します。そして「ある作家が『われわれは労働力を呼んだが、やって来たのは人間だった』という言葉を残していますが、これは今の日本がかかえる問題をよくあらわした言葉ではないでしょうか」という一文で締めくくられます。
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