中学受験は父の「経済力」と母の「狂気」が全てだ 漫画「二月の勝者」が描く受験の現実(前編)
中学受験塾の裏側が透けて見える
物語の舞台は中堅中学受験塾「桜花ゼミナール」。2月の中学受験を終え、バケモノ級トップ塾「フェニックス」のカリスマ講師の黒木蔵人が、その後塵を拝する「桜花ゼミナール」に転籍する。黒木は、新小学6年生を前にして「君達全員を第1志望に合格させるためにやって来た」と豪語する。そこにもう1人の主人公・佐倉麻衣が入社する。
中学受験塾の内部事情や各家庭で起こるトラブルの数々の描写は、私から見ても極めてリアルだ。てっきり、作者の高瀬志帆さんは元塾講師なのだろうと思ったくらいだ(実際は違う)。中学受験を経験中の保護者が読めば、塾の裏側が透けて見え、さらに登場人物のいずれかの家庭に“わが家”を重ねて読めるだろう。
<第1集>コミック帯文言「受験塾は、子どもの将来を売る場所です。」
「『受験塾』は、『子どもの将来』を売る場所です」「『スポンサー』すなわち『親』です」「生かさず殺さず、お金をコンスタントに入れる『お客さん』」などと、にべもない言葉を連発する黒木に対し、正義感の強い佐倉は猛烈に反発する。
しかし一方で佐倉は、黒木の冷徹な言葉の裏側に、子どもたちに対する温かい眼差しが隠されていることにも次第に気づいていく。そういう佐倉自身には、中学受験の経験がない。しかしどうやら、かつて空手の指導で、「あなたのため」を思うあまりに子どもを潰してしまったという苦い経験があるようだ。
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