義元は、
ことができる、いわゆるPDCAをしっかり回せるリーダーだったのです。
PDCAを回せる力は、尾張侵攻を始める前から存分に発揮されていました。義元は敵の部下を買収、つまりM&Aをするために綿密な計画を立てて実行し、その成果をきちんと評価して改善することを積み重ねます。たとえ敵方にいたままでも必要なときだけ味方してくれればいいという形で寝返らせ、潜在的な味方を増やすというようなことも行いました。
攻め込む前の段階から信長の配下を裏切らせる計画を進め、織田方の有力者である山口氏を寝返らせ、かなりの形成優位を作れていたのです。そして義元は、部下にもPDCAの実施をきっちりと求めます。だからこそ計画的に領地の経済を動かして、大兵力を集結させることに成功したのです。
こうして準備を万端に整え、いよいよ侵攻というタイミングを迎えました。ここで元康はその尾張侵攻の先鋒(最前線)を担当します。冒頭で申し上げたように元康は、もともとの領地を自ら治めるために岡崎城に戻りたい、つまり自分の子会社の社長に戻りたかったわけですから、そのための成果を出すには、今回のように万全の準備をして始められる戦は絶好のアピールの場です。
先鋒は最初に敵にぶつかる役割を担うため、出方のわからない相手とぶつかって兵を失うリスクはあるものの、逆に後続の部隊が参戦する前に大きな成果を上げることが可能です。元康にとっては願ってもない好機でした。
戦力分析に使えるランチェスターの法則
そんな元康を先鋒に据えた今川軍は、2万5000の軍を率いて2500〜3000しかいなかった信長の軍が守る尾張に侵攻します。今川軍は10倍近い兵数を揃え一気に攻めに出たのですが、戦の勝敗はもちろん兵数だけで決まるわけではありません。
ここでは現代のマーケティングなどに活用されている「ランチェスターの法則」で両者の戦力について考えてみましょう。計算式は以下の通りです。
人数に持っている武器の質や量をかけ算するので、武器さえ非常に高性能なら人数が少なくても勝てるという見方ができます。ただし、この計算式は狭い範囲で戦う場合の「狭域戦」に使うもの。今回は今川が織田の領地である尾張全土を狙った「広域戦」なので、その場合は計算式が次ページのように変わります。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら