平松自身も「虹色の飛行少女」での活動を地下アイドルと表現しており、当事者意識でもそのような差が見て取れる。
「地上」と「地下」。このどちらも経験している平松はアイドル界では稀有な存在だ。だからこそ「現役を引退した今だからこそ言える」というメッセージがあったのだ。
ではいったいなぜこのようなツイートをしたのか。それは平松のアイドル現役時代に端を発していた。
そして、それはこのコロナ禍におけるアイドルの現状を、自分の経験からくる言葉で「今苦しんでいる誰かが救われるかもしれない」という純粋なる思いからきたものだった。
コロナ以降「解散」「卒業」が相次ぐアイドル界
コロナ禍となって以降、アイドル界では「グループ解散」や「メンバー卒業」が相次いだ。
「コロナ禍は、特に地下グループに影響を与えたと思います。地下グループの現場は実際に足を運ぶ『現場主義』の色が強いですし、一時的な行動制限もあったので現場に来る人が減ってしまった印象もあって……」
補足すると、「アイドルのライブ」のことを、アイドルやファンは「現場」と称する。
仮に1日2回ライブがあるとすると「今日の現場はお昼に渋谷で夜は新宿の回しだわ~」という会話がなされる。
そんな「現場」から、この2年間、事実ライブそのものが中止になったりして、極端なまでに客足が遠のいた。
当然、アイドルたちは、将来への不安や焦り、苛立ちが募る。そしてそれらは、少しでも「救い」を求める気持ちから、不特定多数が見るSNSに発信される。たとえば、こんなツイートがその典型例だ。
「今日は私推し、誰もいなかったよ~。みんな私のこと好きじゃないの?」
「応援電波はいらないから!」
これらは、平松に言わせれば、アイドルとして自身のイメージを損なう「マイナスのツイート」になるという。そして、コロナ禍は、こういったツイートが本当に増えた時期でもあった。
「アイドルの子たちが、危機感や焦りから、長期的に見ると『その子の得にならない』と思えるネガティブツイートや、自分の価値を下げてしまうツイートを発信することが増えていて、本当に『もったいない』と感じていました」
平松のメッセージで最も注目すべきはこの「長期的な視点」である。
典型的なNGツイートを見返すとよくわかる。「応援電波はいらないから」というのはまさに悪手と言えるだろう。
「応援電波」とは、ライブ現場に来ずにツイートの「いいね」や「リプ」のみで応援しているファンを指す言葉になる。
「ライブ現場に来てほしい」という想いから、アイドルが時々こういったツイートをするのだが、これも平松の考えでは、せっかくとれる反応を否定する「マイナスツイート」をしていることになる。