「新自由主義大政翼賛」から転換する方法はあるか 「民主的多元主義」による経世済民の復活可能性

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

むしろ注目すべきは、くだんの闘争、ないし戦争に「新しい」という語句がつけられていること。

アメリカで階級闘争が激化したのは、じつは現在が初めてではないのです!

階級間の平和と「上からの革命」

階級闘争の概念は、その気になればプラトンにまでさかのぼることができるようですが、広く浸透したのは19世紀、産業資本主義が成立してからのこと。

マイケル・リンドも、アメリカにおいて階級闘争が最初に繰り広げられたのは、南北戦争(1861〜1865年)から1930年代にかけての時期と規定しました。

当時の企業は政府と結託、労働者を厳しく締めつけたとのことで、リンドはこのころの労働者の抵抗運動を、アメリカ独立戦争や南北戦争の有名な戦いになぞらえているほどです。

 

しかるに世界恐慌から第二次世界大戦にかけての約15年間で風向きが変わる。

労働者の権利を尊重し、生活水準を高めなければ、国の繁栄も望めず、国際的な地位も維持できないということになったのです。

こうして労働組合の基盤が強化され、同時に社会保障が整備される。さらに政治・文化・社会の領域でも、労働者階級の利益や価値観を擁護する団体に発言権が与えられ、「民主的多元主義」と呼ばれるシステムが成立します。

同様の変化はヨーロッパでも見られました。産業資本主義が発展するにつれて、支配階級の内実は「資本家」から「管理者」(高学歴・高収入で、経済の生産活動を管理・統括する専門技能を持った人々。たいてい大都市圏に居住する)へと移行しましたが、とまれ対立していた階級の間に平和が訪れたのです。

 

冒頭で紹介したサラ・ケンジオールの言う「かつてない安定と繁栄」も、くだんの平和に基づいたものにほかなりません。階級間の力関係が対等でない以上、立場が弱いほうの階級を保護することなくして、みなに平等なチャンスが与えられる状態は成り立たないのです。

次ページ管理者エリートの大同団結
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事