「新自由主義大政翼賛」から転換する方法はあるか 「民主的多元主義」による経世済民の復活可能性

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同国の評論家で、権威主義体制の専門家であるサラ・ケンジオールは、著書『頭隠さず、尻も隠さず〜ドナルド・トランプの台頭とアメリカの没落』(フラティロン・ブックス社、アメリカ、2020年、日本語題は拙訳)で、次のように述べました。

 

「1946年から1974年まで、つまりトランプの人生の最初の28年間、アメリカ経済はかつてない安定と繁栄を享受した。それはアメリカン・ドリームが現実のものになったと思えた時代だった。だが〈アメリカ的な生き方の不動の基盤〉と見なされたこともあるこの夢は、今や〈歴史上の一時期、たまたま成立した束の間の輝き〉として認識されつつある」(同書、60〜61ページ。拙訳、以下同じ)

エリートと大衆の闘争が激化する

ケンジオールによれば、アメリカン・ドリームの具体的な内容は以下のとおり。

 

「安定した仕事を得て賃金が定期的に上がること、自分の家を手に入れられること、学士号や修士号、はては博士号がなくともキャリアに支障が生じないこと、そしてこれらの学位を取るとしても、何十年にもわたって返済に苦労するような負債を抱え込まずにすむこと」(同、61ページ)

 

大それた望みではありません。

というか、この程度の夢が実現できないとすれば、アメリカは「高学歴で裕福なエリート」と「低学歴で貧しい一般大衆」の二つの階級に分裂してしまったことになる。

後者に生まれついたら最後、前者の仲間入りを果たすのはきわめて困難。

 

二つの階級の間で、対立が激化して当たり前でしょう。

ずばり階級闘争が始まるのです。

この概念、20世紀末に社会主義陣営が崩壊したところで、過去のものとなったかのごとく思われましたが、決してそうではなかった。

だとしても、なぜこんなことになったのか?

 

これを解明し、社会の安定と繁栄、すなわち経世済民に向けた処方箋を提示しようと試みたのが、アメリカの政治学者マイケル・リンドの著書『新しい階級闘争 大都市エリートから民主主義を守る』です。

「階級闘争」、英語では「Class Struggle」とか「Class Conflict」と呼ぶのが普通ですが、リンドは「Class War(階級戦争)」という一段強い表現を使っている。

ただし「階級闘争」を「Class War」と呼ぶ場合もあるようなので、この点は脇に置きます。

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