若者が熱狂する「ブレイキングダウン」光と影 「オーディション暴行事件」で露呈した未成熟さ
主催者のYUGO氏はBreakingDownについて、過去はやり直せる、努力することで困難も乗り越えることができる、過ちを犯しても再出発はできる、そんな舞台を用意することで多くの人を勇気づけたいといった発言をしている。
「BreakingDownは、いわば人間讃歌でもある」(YUGO氏)
新しい自分、より強い自分を目指す
BreakingDownの参加者は、派手な元不良的なパフォーマンスに基づいた濃いキャラクターばかりではない。過去の自分と決別し、あるいは失敗を乗り越えての再スタートなど、更生と再生の物語を生み出してきたBreakingDownを見て勇気づけられて応募、試合をした参加者もいる。
伝統派空手歴15年の泉あおさんは空手道場の家に生まれ、小さい頃から自然に空手を学び指導者に。しかし信頼する人からの裏切りを受けて精神的に追い詰められ、何年も空虚な心のまま引きこもりになった。
しかしBreakingDownをきっかけに再び立ち上がる気持ちになり、公開オーディション、本戦ともに圧倒的な強さで勝利を収めた。
「必ずしもこの一度で自分が大きく変わったわけではありません。でも次回大会も含めて前向きに進む勇気をもらいました」(あおさん)
パーソナルトレーナーとP・P・P・ TOKYO所属プロレスラーという二足の草鞋を履く八須拳太郎さんは赤いショートタイツに濃い胸毛、ビルドアップされた肉体、相手のパンチを恐れず真っ直ぐに突進してパンチを振り回すとオーディション、本戦ともに相手を圧倒してノックアウト勝利を果たした。
しかし映像の外での八須さんは繊細で生真面目、ストイックなタイプの人物だ。プロレスラーとしてのキャラクターは演じているものの、YouTubeで何か面白い映像を続けて投稿できるようなタイプではないが、その圧倒的な強さが話題を集め、少しずつエンターテインメントの世界にも馴染んできている。彼女いない歴17年のキャラを前面に押し出し、BreakingDownを通じて新しい自分、より強い自分を目指す。
「喧嘩に明け暮れてきた不良たちへの更生の機会」といったステレオタイプだけではなく、よりストイックに何かに打ち込もうという人たちへと出場希望の波が広がり、さまざまな境遇のひとたちが目指す舞台になってきたとも言える。
しかし参加者の自主性を重んじる一方で、看過できない“暴走”も見られた。
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