36歳で希少がん発症「仕事を失った会社員」の今 「がん患者と仕事」病院や会社の取り組み

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万一、社員ががんと診断された場合は、「まず本人の気持ちを受け止めることが一番大切だ」(若尾氏)。企業側ががんの古いイメージに振り回されて、一方的に「楽な部署に異動させよう」と判断するのではなく、本人の希望を聞いたうえで、会社の事情と照らし合わせて話し合うことが重要だという。

がんは個別性が高く、病状や進行によって日々体調が変化する。「想定よりも副作用が辛くなったり、その逆もある。体調の変化に応じて、柔軟に対応してほしい」(若尾氏)。

企業が対応を相談できる場としては、嘱託産業医や、各都道府県の産業保健総合支援センター、そして『がん相談支援センター』がある。若尾氏は、「がん相談支援センターは、がん患者だけでなくご家族や会社の方、誰でも相談できる。困ったことがあればぜひ相談してほしい」と話した。

ポーラの取り組み

従業員ががんになっても働き続けられるよう、サポート制度を充実させている企業も徐々に増えてきている。

化粧品メーカー大手のポーラでは、がん治療と仕事の両立をサポートする「がん共生プログラム」を2018年に始めた。横手喜一社長(当時)が販売現場を訪れた際、乳がん治療と仕事、そしてがん患者向けのボランティアを行う、1人のビジネスパートナーの姿に共感し、「がんは他人事ではない。活動をバックアップしよう」と、本プログラムが生まれた。

ビジネスパートナーとは、オーナー・マネージャー(ショップ運営のマネージャー職)や、ビューティーディレクター(販売員)といった、同社と委託販売契約を結ぶ個人事業主だ。

当プログラムの特徴は、従業員だけでなくビジネスパートナー向けの制度も充実させている点だ。ビジネスパートナーの働き方に応じて、がん検診補助や人間ドック相当の総合健康診断の全額補助、そして治療中の収入の一部支援まで行う。

収入の一部支援について、サステナビリティ推進室の片岡祐子マネージャーは、「ビジネスパートナーは歩合制なので、治療に専念すると収入がなくなる。そこで、収入の一部を支援する制度を作りました」と言う。

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