気仙沼市「ひとり親」世帯の見えざる生活困窮 子どもの孤立と貧困を防ぐ東北被災地の奮闘

✎ 1〜 ✎ 12 ✎ 13 ✎ 14 ✎ 15
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

県外IT企業2社の協力で進める女性のIT就労支援は、「休みたいときに気兼ねなく休める」点に特長がある。一般企業に勤める女性は、子どもが体調を崩したときなど、周囲に「申し訳ない」と謝りながら休まなければならない。休めないケースすらある。

その結果がパート・アルバイトなど非正規率の高さに表れており、彼女たちはスキルも経験も身に付かない環境に置かれ続けている。

気仙沼プロジェクトの理念は生活の持続可能性だ。IT就労支援で雇用された女性たちはデータの入力や整理を担う。「人間の安全保障」フォーラム理事の石本めぐみ氏は「データ整備や分析、プログラミングは今後、社会で必要とされる。一定のスキルを身に付けられれば、どんな環境でも働き続けることができる」と、プロジェクトの狙いを語る。

つながりをつくる

もう1つ。ひとり親が仕事を続けるうえで必要なのが、見守り機能を兼ね備えた子どもの居場所だ。

11月3日、気仙沼市の市街地に、子どもが自由に立ち寄れる居場所「みらいと」がオープンした。気仙沼プロジェクトの一環で、学校帰りの子どもたちが宿題をしたり本を読んだり、iPadでプログラミングを学んだりできる場だ。対象者は限定しない。石本氏は「誰もが自由に遊びに来られる場にすることで、地域で孤立しがちな子どもたちも来られるような場になってほしい」と語る。

11月3日にオープンした「みらいと」に集まった地元の親子ら(写真:記者撮影)

子どもの居場所づくりは女性の就労支援にもなる。女性が地域で働き続けることができれば、子どもの貧困や孤立の解消にもなりうる。つながりを絶やすまいとする気仙沼の実践は続く。

野中 大樹 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事