「安売り競争」が日本の観光地をダメにする根因だ スキー場に「価格2倍のVIP券」を導入した深い訳
一方、私たちが主戦場としてきた国内スキー場業界では「負のスパイラル」の例ばかり見るように思います。
1:業界内の過当競争で「安売り」競争が横行。市場が拡大しない中で収益性が低下
2:多くのスキー場で十分な設備投資やサービス提供ができない
3:お客さんにワクワクするような体験を提供できない
4:スキー場離れが加速
5:さらに安売り競争をして来場者数を維持しようとし、収益性が悪化する
「負のスパイラル」を脱却し、ディズニーランドのような「正のスパイラル」を作り出すには、隠れた資産を活用して新しいコンテンツを作ったり、お客さんに対するサービスや商品の設計を変えたりして、お客さんが「支払ってもいいと思える価格」を上げていくことが必要です
白馬岩岳では2019年、スキー場としては国内唯一のファーストクラス・プログラム「HAKUBA S Class〜VIP lounge & Priority pass〜」を開始しました。これは有効活用されていないレストハウスを改装したラウンジの利用や、ゴンドラリフトの待ち列を回避できる優先搭乗、優先駐車場、一般営業前の誰も滑走していない朝一番のゲレンデを独り占めできる「ファーストトラック」など、さまざまなラグジュアリー・サービスをパッケージ化したプログラムです。
通常のリフト券の2倍程度の価格を頂戴していますが、1回利用していただいたお客さんからは、「これ抜きの岩岳は考えられない」と絶賛いただけるケースも増えてきており、利用者数も年々増加しています。
しかし、このように「隠れた資産」をうまく見つけて磨くことで単価を上げていくという努力をしている国内スキー場の数は、正直に申し上げて決して多くはありません。それでは、コンテンツで差をつけることができません。
だから、ほかよりも「安い」ことでお客さんの目を引こうとする「安売り競争」ばかりが横行してしまっているのです。
「安売り競争」にさらに拍車がかかる
コロナ禍で、こうした安売り競争に拍車がかかっています。
とある県内スキー場が自治体からの補助金を得て「今シーズンはチケット全員半額キャンペーン」を開始したところ、そこにお客さんが殺到。お客さんを奪われた隣町のスキー場がシーズン途中から「うちも半額に」とキャンペーンを始め、さらに苦しくなったその隣の市のスキー場は「X月X日は県民無料キャンペーン」……。
次のシーズンには、長野県と新潟県が張り合うように、シーズン当初から大幅な値下げを支援するキャンペーンを展開しています。
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