「安売り競争」が日本の観光地をダメにする根因だ スキー場に「価格2倍のVIP券」を導入した深い訳
では、お客さんは減ったのでしょうか。そんなことはありません。むしろ開業初年度に1000万人だった集客は、コロナ禍で入場規制を始める前には3000万人近くになっていました。
もちろん、途中でディズニーシーを開業するなど、キャパシティも大きく増加していますので、単純な比較に意味はありません。
でも、やはり「値段を上げていても、その分コンテンツを充実させていれば、お客さんの数も増やせる」という、最もわかりやすい例だと考えています。
「正のスパイラル」がうまく回る海外のスキー場業界
海外のスキー場では、このような「正のスパイラル」を実現できている企業も少なくありません。
代表例が世界最大のスキー場運営会社である「ベイルリゾート(Vail Resorts Management Company)」です。ここも経営の教科書どおりの「正のスパイラル」に向けた戦略を遂行しています。
同社のフラッグシップ・スキー場ともいえるVail Resortでは、2005年には、当日販売の1日券の価格は77ドル程度でした。それが2022年には、なんと239ドルまで値上がりしています。来場人数は2005年には150万人前後だったものが、コロナ前には160万人程度。ほぼ同じか、少し伸ばしているくらいなのです。
数年前に、私もVail Resortで滑ったことがあります。リフトは、日本国内の大半のスキー場と比べて真新しいものばかり。スピードも速く、より長距離なため、滑走の満足度が非常に高かったことが印象的です。シートにはヒーターが入っていて、乗車中に寒さを感じないのもありがたい工夫でした。
レストランや街並みも真新しく、滑走時間以外も楽しく過ごせます。さらにスキー場の中で無料のクッキーやホットレモネードを配るサービスが展開されていたり、いろいろなところで音楽ライブが開催されていたりと、リゾートとして非常に充実していることに驚かされました。
Vail Resortの経営陣に話をうかがった際も、「しっかり投資を行い、サービスを追加してお客さんの満足度を上げ、結果として価格を上げさせていただくことで、永続的なビジネスモデルがつくれる」とはっきりおっしゃっていました。
国内スキー場の現状を考えると、彼我の差を大きく感じて日本に戻ってきた記憶が今でも鮮明に残っています。
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