「安売り競争」が日本の観光地をダメにする根因だ スキー場に「価格2倍のVIP券」を導入した深い訳
実は、本音で言えば「誰かがやるから、うちもやらないとお客さんが逃げるかもしれない」という恐怖心に駆られて、みんなで続けているだけなのではないでしょうか。本来は正価に近い金額で買ってくれたかもしれないお客さんにまで値下げしてしまっている可能性が高い、非常に残念な施策でもあります。
シーズン中も「クーポン」という名の下で、さまざまな値下げ施策が横行しています。しまいには、各スキー場のクーポンを取りまとめたチラシが各スキー場からの広告料でつくられ、スポーツショップや高速道路のサービスエリアなどで配られている始末。
国内スキー市場が減少する中、新たなスキーヤーを増やそうとして導入された施策も、結果として「安売り競争」に拍車をかける結果につながります。
ある大手旅行サイトでは、「若者にスキーをするきっかけをつくる」ことを目的に、「XX歳はリフト券無料」という取り組みがありました。お客さんと旅行サイトにはメリットがありますが、スキー場側にとっては、うまみなどありません。チケットの価値を自ら破壊することにつながりかねませんし、収入が得られないので次の投資にもつながりません。
このように長年にわたって割引やクーポンが乱発されてきた中、お客さんも「チケットを正価で買わないこと」が当たり前になりつつあり、結果として窓口でも割引券があるのが当たり前、と思われるようになっているのです。
レジャー産業の王者ディズニーの「正のスパイラル」
スキー場をレジャー産業の1つと捉えた場合、国内で最も強いライバルの1つは「東京ディズニーランド」です。
ディズニーランドがなぜ多くのお客さんであふれかえるのでしょうか? 理由はいろいろあると思いますが、私がいちばんの要因だと考えているのは、
「毎年、新施設や季節ごとのイベントをしっかりと開催してお客さんを安定的に集客しながら、徐々に料金を引き上げ、そこから得られた資金を次のアトラクションやイベントに投資し、お客さんにまた行きたいと思わせる」
という「正のスパイラル」がうまく回っていることです。
1:新アトラクションや季節イベントで安定的に集客
2:お客さんにワクワクするような体験を提供
3:料金を引き上げてもお客さんが離れない状況をつくり、徐々に値上げする
4:その資金を、次の新アトラクションや季節イベントに投資
ご存じの方も多いと思いますが、1983年に開業した当時、ディズニーランドのワンデーパスポートの料金は3900円でした。多くのスキー場の1日リフト券よりも安かったのです。
その後、数年おきに数百円単位で価格が上がり、直近では9400円。ここ30年近く、ほぼ据え置きになっているリフト券の約2倍です。
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