たとえば2011年の東日本大震災では、発生直後こそ多くの企業が「社員は当面、自宅待機」という対策をとったものの、時間が経つにつれ会社によっては社員を「出社させる」というケースが多くなり、リモートワーク普及にはいたりませんでした。
それから10年ほどの間に起こった大きな変化の1つに、デジタルインフラの拡充があると思います。通信速度が格段に早くなり、オンラインで会議や打ち合わせをするハードルが下がりました。またスマートフォン所持率が高くなったことで、多くの人がメールのチェックや返信といった簡単な業務を移動中に行うようになりました。2015年から2016年ごろのことです。
こうしたデジタルインフラの拡充とともに、仕事の軸足をリアルからオンラインの場へと移す人が急激に増えたのではないでしょうか。そして、もうひと押しのトリガーがあればリモートワークが本格的に普及しはじめる――というところで奇しくも起こったのがコロナ禍だったと考えられるのです。
リモートワークに向く会社、向かない会社
感染拡大を抑制するという強い社会的要請を除いて考えると、現実的にリモートワークに向いている会社、向いていない会社というのはあるでしょう。
社長や役職者に逐一おうかがいを立てながら仕事を進めなければならない企業だと、リモートワークによって全体の業務が滞る恐れがあります。社員が自立的・自律的に働いているフラットな企業のほうが、リモートワークには向いているのではないかと思います。
これは決して良し悪しではなく、あくまでも向き不向きの話です。社長をはじめとした上層部が強いリーダーシップをもって社員を引っ張っていくタイプの企業には、それが自社の成長の推進力になるという強みがあります。リモートワークを導入すると、そうした強みが削がれてしまう可能性があるのです。
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