「Netflix広告プラン」が悪手だと言える3つの理由 「ダーマー」に広告を入れたい企業があるのか

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理由その2)Netflixのアイデンティティは広告モデルと正反対だから

日本のテレビ局だけでなく、海外のコンテンツもCMがついてるものとないものがある。広告の出し方には始まる前にCMが出るプリロールと、途中に出るミッドロールがある。映画を提供した権利者は、プリロールは譲ってもミッドロールは嫌に決まっている。勝手なところをCMで切るなと言うだろう。そもそもNetflixは広告がつかないから配信権を渡したのに、プリロールであっても絶対CMをつけたくない権利者は多いはずだ。そういう交渉を一つ一つのコンテンツに対し行った結果がCMが出たり出なかったりになったと想像できる。

Netflixオリジナル作品なら自分のものだからCMをつけられるのか。そう単純でもないはずだ。最近作で評価の高かった「パワー・オブ・ザ・ドッグ」はNetflix作品だがCMなしだ。誇り高いジェーン・カンピオン監督がCMをつけるなんて絶対許すはずがない。

またNetflix作品はテレビでは放送できそうにない強烈な番組が売りだ。「イカゲーム」や「地獄が呼んでいる」は人気だが、次々に人が死ぬこの2作にCMを出したい企業がいるだろうか? 最近の作品で世界中で人気作になった「ダーマー」は殺した人間を食べてしまう異常者の実話を基にしたドラマだ。私が企業の担当者だったら、頼むから「ダーマー」にはうちのCMを入れないでくれと懇願するだろう。放送に向かない、つまりスポンサーがつかない企画を実現するのがNetflixなわけで、彼らの広告事業にはそもそもの矛盾があるのだ。

CMの出し方にも課題がある

CMの出し方にも課題がある。まだ数日見ただけだが、広告つきプランを見て回る時間の中でCMはものすごく少ない。日本のテレビでは放送時間の中のCMの枠は18%以内と決まっているがNetflixはそれより圧倒的に少なくほんの数%だろう。プリロールCMの映画を見ればほんの1〜2分しか2時間の間に接しない。

またさっきCMを見た番組を一旦やめて途中から再生するとCMなしでそのまま視聴できる。私の想像だが、視聴体験を大事に守ってきたNetflixが、顧客にCMをやたらと見せないようにしているのではないか。それは素晴らしいことだが、CMで儲けるためのプランでCMをあまり見せないようでは成り立たない。

またNetflixの質の高さも広告メディアとしては障害になる。テレビよりお金をかけた質の高い番組の前にティファニーやルイ・ヴィトンのCMはいいとして、メルカリやイーデザイン損保のような超日常的なCMが流れると、非日常に浸る気持ちがなえてしまう。その意味でも、NetflixはCMに合わないと思う。

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