塩野:もともとブルッキングスはワシントン大学の一部局で、そこから派生したんですよね。
佐藤:ブルッキングスの創設者と、ワシントン大学の実質的な創設者(新しいキャンパスとメディカル・スクールの変容に多大な貢献をした方)は同じ方なんですよ。ですから関係が強くて、今もワシントン大学にあるエグゼクティブ・マネジメント・プログラムはブルッキングスが提供していますし、ワシントン大学がブルッキングスへ寄付もしています。最初は2カ月という約束でしたが、私がもっと働きたいと泣きを入れて、いろいろと画策した結果、日本に帰ってからも客員研究員としていてもいいと言っていただけて、現在3年目です。
大勢の中で輝くために、売り込みは大事
塩野:佐藤先生の研究テーマは医療制度の規制についてですが、これはどういうことを研究しているんですか。
佐藤:メインの研究テーマは2つあって、英語でいうと、バイオメディカル・イノベーションのあり方と、将来のコーディネーテッド・ケアの行方です。
塩野:米国のそういう研究機関やシンクタンクでは「自分が何をできるかを売り込む」ということは大事ですか?
佐藤:すごく大事ですね。私は正規プロセスでは入っていませんが、普通は1人採るのに少なくとも100人は面接するそうです。その100人の中で輝かないといけませんから。
塩野:ブルッキングスのほかにも、政策的に影響を持つシンクタンクはたくさんありますよね。ヘリテージ財団しかり、AEI(アメリカン・エンタープライズ研究所)しかり、CSIS(戦略国際問題研究所)しかり。中でもブルッキングスはシンクタンクの中のシンクタンクというか、つねにランキング1位です。そういうところに入る人って、どんな人物でしょうか? 同僚にはどんな人がいるんですか?
佐藤:チームの中に必ず1人か2人いるのは、一時期政府部門で活躍し、リタイアしたわけではないけれど、今はちょっと休んでいる、というような人ですね。政権が代わるとどうしてもできないことがあるので、その間に自分で案を練り上げて、戻ったときにそれを実現する、ということをしている人がたくさんいます。
塩野:それはよくリボルビング・ドア(回転ドア)といわれるように、米国では政権ごとに公職に任命される人が入れ替わるからですか。前の政権で主要ポストについていた人は、政権が代わると一旦シンクタンクに行き、そこで牙を研いでまた戻っていく。そういうイメージでしょうか?
佐藤:そういうイメージで間違いありません。私の昔のボスは、ブッシュ政権下でFDA(米国食品医薬品局)の長官と、CMS(米国公的医療保険センター)のトップを務めていた人物です。彼は自分の部下だった弁護士も一緒にブルッキングスに引き連れてきていますよ。
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