米国のシンクタンクは、「権力者」だった

日本人は"研究所"の実態を知らない

佐藤氏「シンクタンクは中立的立場を目指している」

塩野:よくシンクタンクというと、「リベラル系」シンクタンクとか、「保守系」シンクタンクなどの枕詞がつきますが、ブルッキングスは中立ということですか。

佐藤:一般的には中道左派と言われていますし、中立を目指しているとは思います。先ほど申し上げた元FDA長官の私のボスなどは、今はブルッキングスにいますが、昔はAEIのように保守的なシンクタンクにもいたこともあります。ですから必ずしも左だということではありません。ただ、民主党政権にたくさんの人を送り込んでいるのは事実なので、中道左派と言う人が多いのかもしれません。

塩野:シンクタンクの要職にある方の報酬は、けっこう高いと聞いたことがありますが、そういったものも含めて、助成金と寄付で成り立っているということですか。

佐藤:たぶんそれに加えて、イベントを開いたときの料金の一部が寄付として入ってくる。それがビジネスモデルになっていると思います。

米国とイギリスのシンクタンク、成り立ちが全然違う

塩野:シンクタンクって頻繁にイベントを開いていて、しかも参加料が高いですよね。

佐藤:そこがすごくおもしろいんです。実はイギリスのシンクタンクのチャタムハウスは個人から参加料を取ります。私もこの前、2日間で7万円というイベントに参加しました。1日しかいられなかったんですが、自分で7万円払ったんです。一方でブルッキングスは基本的に無料です。だから、誰かドナー(提供者)がいるんですね。両者は成り立ちが全然違うんです。

塩野:7万円で、政治的影響力を持つ方々にコンタクトできる権利を買うと考えれば、安いものですよね。ところで「シンクタンクはアイデアで戦う」とか、「アイデアを売るところである」と言われますが、それはどういう意味ですか?

佐藤:たぶん既存の政策とは違うアイデアを出すことが求められているんでしょう。たとえば私がすごく驚いたのは、ブルッキングスが医療制度改革において、「シェアード・セービング・アプローチ」という新しい概念を生み出したことです。今までは「フィー・フォー・サービス」といって、たくさん医療サービスをした人がたくさんおカネをもらえる仕組みだった。それを量ではかるのはなく、医療の質が高くなったときにボーナスが出るように変えたのです。

しかも“ただ質を上げるだけではなく、医療費を若干減らしてくださいね”、“ターゲットとなる医療費の額を目指して、医療グループで対象患者を特定してアプローチしてくださいね”、という制度です。それがオバマケアの根本になっています。シンクタンクとはそういう政策アイデアを生み出し、そしてそれを政府と一緒になってどんどん広げていく場所だと思います。

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