千葉・海老川の下流域住民が抱える「最大の心配」 上流域の土地区画整理が水害を誘発する危険性は?

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海老川は、船橋市北部に発し、東京湾に注ぐ。支川と合わせた流域面積は27.12平方キロメートル、県が延長2.67キロメートルを管理する二級河川。千葉県の資料によると、1978(昭和53)年7月の集中豪雨で浸水家屋1497戸、1981(昭和56)年10月の台風24号で浸水家屋854戸、1984(昭和59)年7月の大雨で浸水家屋2064戸とかつて水害が多発した。

特に、浸水家屋2464戸をもたらした1986(昭和61)年8月の台風10号では主に下流域の密集市街地が被災し、河川激甚災害対策特別緊急事業による対策が進んだ。その結果、船橋市によると、「下流域では(海老川は)あふれなくなった。平成25(2013)年の台風26号の時も床下浸水200戸、それも上流地域。下流域はギリギリあふれなかった」「平成8(1996)年の水害を最後に、下流域では本川からあふれた水による浸水はない」(都市政策課)という。

下流域は水害とは無縁になった、と言ってよいのだろうか。船橋市危機管理課による「1988~2022の床上床下浸水調査結果一覧表」から、海老川水系周辺の地区に絞ってデータを取り出し、2000年以降に限って浸水状況をチェックした。その結果、海老川水系全体の浸水は計195件、そのうち下流域の浸水は20件(床上浸水4、床下浸水16件)だった。

川の水があふれて堤防を乗り越えたり、堤防が壊れて水が堤防外に流れ出したりするわけではないのに、なぜ床上、床下浸水が起きるのか。雨水枡や側溝に落ち葉が詰まっていて雨水が道路を走る、雨水が下水道管からあふれる、街中の水を川にはきだす排水機場があっても川自体がいっぱいで排水できない――など要因はさまざまだ。都市の下水や河川の設備が対処できない大雨は近年増えており、日本中で「水害とは無縁になった」地域はない。

海老川上流域でこれまで大雨の際に水がたまるなど、「遊水機能」を果たしていた休耕田や湿地がなくなり、盛り土されてかさ上げされ、アスファルトで固められることにより、その分、川が増水し、下流域であふれるのではないか――。そうした心配が、下流域住民の間でくすぶる。

船橋市が開発の影響検証、公表するも市民は首を傾げる

今年1月の千葉県都計審で委員が繰り返し事務局にただしたのも、海老川下流域の住民が持つ疑問と同じ点だった。「下流の被害が一層増すということになるのではないか」「盛り土によってその部分の水がどこに流れて、どこにどんな影響が出るのか、それも含めてきちんと市民に示すべきだ」などの委員の発言に対し、市は「シミュレーションを行っていないので、わかりかねる」と答えた。

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