千葉・海老川の下流域住民が抱える「最大の心配」 上流域の土地区画整理が水害を誘発する危険性は?

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治水対策に詳しい元国土交通省水管理・国土保全局長の関克己・河川財団理事長が説明する。

「もともと水がたまるところを開発によって埋めると迷惑をかけますよね。あるいは、水がしみ込んでいたところを舗装したり構造物を作ったりすると保水機能がなくなるので、下流に迷惑をかけることになる。開発行為の許可にあたって洪水が増える分に対応するような量をそこに貯めるというルールがある。そういう場合に作るものを調整池と呼んでいます。

昭和50年代、住宅宅地開発が進みましたが河川の改修は時間がかかってなかなか進まない。そこで開発行為にあたっては、地域によって違いますが一定の量の水を貯めることがルール化された。自治体は調整池を作る基準を公表しています」

確かに、船橋市にも宅地開発要綱の中に盛り込まれた調整池の設置基準がある。土地区画整理事業は法体系が異なるため、市が県の河川部局と協議し、県から基準が示されたが、それは市の設置基準と同じ数字だった。事業地の河川を除く面積にこの基準をかけて計算すると、必要な貯留量は総計5万2882立方メートル。6つの調整池の貯留量は計52930立方メートルなので、ギリギリ基準をクリアしていることになる。

では、「時間70ミリの雨に対応」という説明はどこから来たのか。「必要な貯留量の基準をいかにどう市民に伝えたらいいか。貯める量ではなく雨の強さで言ったほうがわかりやすく伝わると思った。計算式から、時間70ミリ降る雨の量をためることはできますよ、ということ。でも時間70ミリが何時間続いても貯められるの?と聞かれると、70ミリが2時間続いた時点で確率論的には違う雨になってしまうのでそれはあふれます」。

市の都市政策課長ら3人の土木技術者に対し、「時間70ミリの雨に対応という説明は、特別に進んだ対策がとられるかのように思わせるものではないか」と疑問をぶつけると、「そういう意図はない」との答え。しかし、ミスリーディングな(誤解を招きかねない)説明だ。

県が建設する「調節池」の完成は30年後

上流域の区画整理事業を行うことによって、下流域の水害リスクは減る、というシミュレーション結果をもたらした2つ目の要因は、県が行う「調節池」の建設と、河床掘削事業を織り込んだことにある。

「調節池」は、事業地南側に隣接する土地22ヘクタールに作られる予定で、容量は55万立方メートル、用地買収は9割以上終わっているという。市のシミュレーションには完成を待たずに暫定利用できることが織り込まれた。一方、私の取材に対し、千葉県河川整備課は「30年後の完成を目指している。いつごろ何%使えるというようなことは言っていない」(宇野晃一副課長)と暫定利用についての説明を避けた。

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