千葉・海老川の下流域住民が抱える「最大の心配」 上流域の土地区画整理が水害を誘発する危険性は?
都計審の注文を受け、市はシミュレーションを行い、8月にその結果を公表した。船橋市が公表済みの海老川水系の洪水浸水想定区域図(ハザードマップ)に土地区画整理事業が与える影響を加え、もとのハザードマップと比較するという方法がとられた。
結果は「上流域の土地区画整理事業を行うことにより、下流域の浸水被害は軽減される」などというもので、8月に住民説明会が開かれ、パワーポイント資料が配布された。データが付された報告書などは公表されておらず、「専門家などで説明を聞きたい人がいれば対応するが、ホームページなどでの報告書の公表は考えていない」(杉原弘一・都市政策課長)という。
説明会会場では住民から「理解できない」といった発言が相次いだ。元建設コンサルタントの廣田治さん(73歳)は「通常シミュレーションの結果を説明する際に示される検証条件が開示されていないため、どうしてあのような結果になったのか理解できない」と述べた。「入力条件の全項目や検証の段取りが開示されるべき。手続きを踏んで次に進んでほしい」と廣田さんは力説した。
調整池の効果について市の説明はミスリーディング
市によるシミュレーションで効果を発揮した要因は2つ。1つは、土地区画整理事業区域内6カ所に設けられる「調整池」。もう1つは、事業区域南側の隣接地に県が建設する「調節池」と河床掘削などの県による河川改修・調節池整備事業だ。
「調整池」の効果は、1月の都計審の席上でも強調された。都計審事務局を務める県は、「現在は時間30ミリに対応するような河川の整備が現況ではできているところになります。それを今、県の河川整備計画の中では時間50ミリに対応するということで整備を進めているところ」「今回は土地区画整理事業の区域内で時間70ミリの規模に対応するような調整池を作る計画としておりますので~」と「下流側への負荷が増すことはない」理由を述べた。
現状は時間30ミリの雨対応、さらに県が時間50ミリ対応で河川整備を進め、今回の開発では一歩進んで、時間70ミリの雨対応の調整池が作られる――あたかもホップ、ステップ、ジャンプと未来を先取りした対策を今回の土地区画整理事業で採用するように思える。ところが、治水の歴史を学ぶと、6つの調整池は昭和50年代以降にできたルールに従ったまでであり、特別な「ジャンプ」ではないことがわかった。
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