千葉・海老川の下流域住民が抱える「最大の心配」 上流域の土地区画整理が水害を誘発する危険性は?

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千葉県が調節池を建設する予定地
千葉県が調節池を建設する予定地(写真:「流域治水の会 船橋」提供)

自治体職員、会計士、著述業など船橋市民で作る「流域治水の会 船橋」の山田素子代表は「市の説明には全く納得できない。市の検証(シミュレーション)に県による河川の工事を入れた段階で、土地区画整理事業による造成工事の影響が見えにくくなった。県が行う工事についても、完成時期やいつから効果が表れるのかなど明示されなかった。市の検証は不適切で詐欺的だ」と批判し、「上流域での事業の見直しを求めていく」と話した。

情報開示や議論が不十分なら総力戦は無理

流域治水関連法(正式名称は「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律」)は2021年11月に施行された。特定都市河川に指定されると、その流域で河川の氾濫を防ぐ対策をとりやすくなる。例えば、田畑や草地を宅地や舗装した資材置き場などにする場合に知事の許可が必要になる。保水・遊水機能がある土地を確保するために「貯留機能保全区域」を都道府県が指定できる仕組みも用意されている。

現在までに11水系126河川が特定都市河川に指定されている。貯留機能保全区域が指定されたケースはいまのところ、ゼロだ。

法の施行に先立ち、国土交通省の音頭取りで、全国の一級河川や一部の二級河川で「流域治水プロジェクト」がスタートした。流域の行政体が一堂に会する流域治水協議会を設けるなど、とりあえず取り組みの形を作るもので、千葉県も昨年11月、海老川を含む4つの川の水系でプロジェクトを策定。その時の報道資料は、「従来の治水対策に加え、流域のあらゆる関係者が協働し、流域全体で水害を軽減させる治水対策への転換を進めることが必要」とうたっている。行政だけでなく、企業や住民を含め、総力戦で水害リスクを減らしていこうという意気込みを感じる。

しかし、企業や住民が参加した「総力戦」は、情報共有や充分な議論があってこそできることを忘れてはならない。

河野 博子 ジャーナリスト

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こうの ひろこ / Hiroko Kono

早稲田大学政治経済学部卒、アメリカ・コーネル大学で修士号(国際開発論)取得。1979年に読売新聞社に入り、社会部次長、ニューヨーク支局長を経て2005年から編集委員。2018年2月退社。地球環境戦略研究機関シニアフェロー。著書に『アメリカの原理主義』(集英社新書)、『里地里山エネルギー』(中公新書ラクレ)など。2021年4月から大正大学客員教授。

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