千葉・海老川の下流域住民が抱える「最大の心配」 上流域の土地区画整理が水害を誘発する危険性は?
「流域治水」という考え方が広がる。気候変動で未曾有の豪雨が頻発し、上流、下流など流域全体で国、自治体、企業、住民がともに治水に取り組む。昨年11月、流域治水関連法が施行された。しかし、利害が異なる関係者間の協議は容易ではない。千葉県船橋市では二級河川・海老川上流域の開発をめぐり、下流域住民から「水害リスクが高まる」と懸念する声が上がる。「情報を共有し、議論する」という状況に遠いことが、問題をこじらせている。
「住民に対し丁寧に説明を」と異例の注文
かつて「暴れ川」と呼ばれた海老川上流域の開発をめぐり、下流域住民から“クレーム”がついている。今年1月18日に開かれた千葉県の都市計画審議会(都計審)で市街化を抑制する「市街化調整区域」だった開発予定地を「市街化区域」へと変更する案が審議された際、問題が表面化した。
委員と事務局の県との間での厳しいやり取りの末、原案は可決されたが、異例の付帯意見がつけられた。「土地区画整理事業による海老川流域の治水への影響に関する検討を続け、住民に対しご理解いただけるよう、丁寧に説明を重ねること」との注文だ。
この開発は、東葉高速鉄道の新駅建設予定地を含む海老川上流域の42.3ヘクタールで土地区画整理事業により、医療センター、クリニックモール・温浴施設などの健康関連施設、高層マンションなどを整備する。開発区域は低湿地で、休耕田、耕作放棄地、墓地や資材置き場が点在。区域全体の約8割はハザードマップ上、0.5~3メートルの浸水が予想されている。これを50センチメートルの浸水ですむよう、盛り土してかさ上げする。
船橋市が「ふなばしメディカルタウン構想」と名付け、この開発を推進している。今年3月に海老川上流地区土地区画整理組合(地権者約200人)が設立され、市の認可を受けた。
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