アメリカ政府が打ち出した先端半導体技術の対中輸出規制の強化が、世界の半導体産業を揺さぶっている。
「現時点では受注残の5%が影響を受けると予想している」。オランダの半導体製造装置大手、ASMLのピーター・ウェニンクCEO(最高経営責任者)は10月19日、2022年7〜9月期の決算説明会でそう述べた。
ウェニンクCEOは、受注残に占める中国の割合について、AMSLの総売上高に占める中国の比率に近いと明かした。決算報告書によれば、7〜9月期の中国での売上高は総売上高の15%だ。これをもとに考えると、中国の半導体メーカーがASMLに発注した製造装置のうち、未納入分の3分の1に影響が及ぶことになる。
「わが社が中国の半導体メーカーに輸出しているDUV(深紫外線)露光システムは、アメリカ由来の技術の使用比率が低く、今のところアメリカ政府に対する輸出許可の申請は必要ない。しかし、装置のメンテナンスに必要なスペアパーツにはアメリカ製のものがあり、輸出許可が必要だ。このことは、DUV露光システムの(中国向けの)販売に間接的に影響するだろう」。ウェニンクCEOは、規制の波紋の広がりにそう懸念を示した。
EUV露光システムの輸出を見合わせ
アメリカ商務省の産業安全保障局 (BIS)が10月7日に発表した規制強化は、説明資料の分量が139ページに上る大がかりなものだ。半導体チップの演算能力、通信速度、プロセス技術などを対象に具体的な数値を示し、それを超える性能の半導体や製造装置の対中輸出を実質的に禁じた。
その影響が及ぶ範囲は、高性能半導体の設計・製造からチップを組み込んだ製品の販売、アフターサービスに至るまで多岐にわたる。
ASMLは、シリコンウエハー上に微細な電子回路を焼き付ける露光システムの世界最大手だ。なかでも回線幅7nm(ナノメートル)以下の最先端プロセスに必要なEUV(極端紫外線)露光システムを実用化している装置メーカーは、現時点では同社が唯一だ。
近年、アメリカと中国の対立がエスカレートするなかで、ASMLは難しい立ち回りを迫られてきた。2018年には、ASML製のEUV露光システムの対中輸出を許可しないよう、アメリカ政府がオランダ政府に要請したことを受け、同社は輸出を見合わせている。
(財新記者: 劉沛林)
※原文の配信は10月20日
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