コロナ収束で出社を強要する企業が陥る落とし穴 「働き方のトレードオフ」の解決が緊急課題

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・オフィスは対面で協力し合うには素晴らしい環境だが、長時間の通勤をしたり、オフィスで長時間過ごしたりする代償として活力が奪われる。
・同僚同士が一緒の時間に働くようにスケジュールを設定すれば、連携を強化できるが、仕事に集中しづらくなったり、ビデオ会議が際限なく続いたりしかねない。

リーダーたちは、こうした問題を痛感し始めた。

コロナ禍で誰もが気づいたように、ある一つの問題を解決すれば、当座は満足感を味わえるが、失うものがどうしてもある。今、必要なのは、そうしたトレードオフの関係をすべて俎上に載せて議論し、難しい判断をくだすことだ。

今日、その種の議論を行う必要性がひときわ高まっている。1800年代から経済史学者たちが一貫して主張してきたように、新しいテクノロジーや働き方が期待どおりの生産性向上をもたらすためには、最良の組織構築と組織運営の手法を組み合わせることが不可欠なのである。

再評価された人的ネットワークの重要性

歴史を振り返ると、組織の変化は非常にゆっくりとしか進んでこなかった。少なくとも、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが訪れるまでは。

2020年春、日本のテクノロジー大手、富士通の人事部門責任者である平松浩樹率いる幹部チームは、わずか2週間足らずの間に、東京で働く6万人の社員のほぼすべてを在宅勤務に移行させた。当時、平松は私にこう語っている。

「もう後戻りすることはありえません。全員がオフィスに毎日出勤する時代に戻ることはありえない。これまで社員は通勤で毎日2時間を無駄にしていました。その時間を学習や研修、家族との時間に費やせるようになったのです。今、考える必要があるのは、職業人生を生産的で創造的なものにする方法です。リモートワークをうまく機能させるためのさまざまな方法論が求められています」

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